フリー特許翻訳者のあの手・この手の特許翻訳 と生き残り術
フリーで特許翻訳をしている杉山範雄と申します。 ここでは、私がフリー翻訳者になって体感したこと、フリー翻訳者を続けるための「生き残り術」みたいなことををお伝えしていきたいと思います。

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 情報を追加、さらに詳しく解説した本
新刊:あの手・この手の特許翻訳
A5版、287頁 H23年2月7日発行
2009年12月 30日
45.パソコンを活用するメリット(最終回)

 今さらながらで恐縮ですが、翻訳にパソコンを活用するメリットについてまとめてみます。

 すでに述べたように、チェックの楽な翻訳文をクライアントに出すことが大事です。そのためには、特に次の2つが重要であると考えています。
(1)技術的なロジックが正確である
(2)コメントが充実している
 これらはどうしても時間がかかります。その時間を捻出するためにパソコンを活用するのです。

 一連の翻訳作業のうちで、機械(パソコン)にできることは機械にやらせて、早くかつ正確に終わらせます。その結果、翻訳者が真の翻訳作業(ロジックチェック(校正)、コメント作成など)に費やせる時間が増え、翻訳の品質を上げることができます。

 このブログでは、「秀丸」のマクロ・ツールを使った翻訳支援について多数紹介してきました。マクロ・ツールは、痒いところに手が届く機能を提供できるだけでなく、市販の翻訳メモリに匹敵する支援レベルを実現できるものです。ぜひ自作マクロの活用により、翻訳の品質と作業効率をアップさせて下さい。

 2年間に渡って「あの手・この手の特許翻訳」を書いてきました。今回が最終回となります。長い間、お読みいただきまして、ありがとうございました。ここでご紹介したノウハウが少しでも皆さまのお役に立てば幸いです。またどこかでお目にかかりましょう。

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2009年12月 1日
44.「秀丸」マクロの作り方(4)

3.他作のマクロを使う

 「秀まるお」のホームページ (http://hide.maruo.co.jp/index.html)には、ユーザーから投稿されたマクロを載せるマクロライブラリがあります。
 トップページ「ライブラリ」(図1)→「マクロライブラリ」(図2)→「秀丸エディタのマクロライブラリ」(図3)。
1頁に約50個のマクロがあり、全部で11頁あります(2009年11月現在)。




 ここから必要なマクロをダウンロード(DL)して使うことができます。「ダウンロード・ランキング」をクリックして、今までDLが多かったマクロを選ぶこともできます(図4)。

 例として、「Grep結果より関数を取得するマクロ」(図3)をDLしてみます。マクロ名をクリックすると別ページに飛びます(図5)。圧縮ファイル名(searchfunction.lzh)をクリックすると、ファイルを開く画面が出ます。

 「プログラムで開く」か「ファイルを保存する」をクリックしてDLします。前者は解凍ソフト(※)で開き、後者は圧縮ファイルのままデスクトップなどに保存します(後で解凍)。
※解凍ソフトの例は「Lhaplus」 (http://www.vector.co.jp/soft/win95/util/se169348.html)
 解凍後にできたフォルダ「searchfunction」内のファイルをマクロファイル用フォルダ(「Hidemarumacro」など)にコピーします(図6)。

 これで、いつでもマクロを使うことができます。マクロの実行は、以前に述べたのと同様です。「マクロ」→「マクロ実行」をクリックし(図7)、マクロ用フォルダに保存したマクロを選ぶ画面を出します(図8)。ここで、DLしたマクロファイル「searchfunction.mac」を選んでOKを押せば、すぐに実行します。


 「秀丸」マクロのユーザーにはプログラマが多く、便利なマクロが多数投稿されています。 ぜひご活用下さい。

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2009年12月 1日
43.「秀丸」マクロの作り方(3)

2.マクロ命令文を組み合わせてマクロを自作する(その2)

 「1.キー操作を記録してマクロとして保存する」で作った「改行を5回挿入マクロ」を、マクロ命令文を使って作った例を示します(図1)。5つの命令文(question、if、endmacro、insertreturn、message)を組み合わせて、使いやすくしてあります。


@このマクロを説明する部分です。
 ・「//」(スラッシュ2本)から改行まではコメントとして扱われて、実行時には無視されます。
 ・ここでは「改行を5回挿入するマクロ」というコメントを入れてあります。
Aマクロ開始をユーザーに確認する部分です。
 ・question文:質問を出す命令文です。if文と一緒に使います。
 ・if文:( )内の式が成立したら、その後の{ }内の動作を行なう命令文です。
 ・endmacro文:マクロを終了する命令文です。
 ・ここでは、「改行を5回挿入します」とユーザーに質問します(図2)。
 ・「はい」だとそのままBに進み、「いいえ」(result == no)だとマクロを終了します。
Bマクロの動作本体です。
 ・insertreturn文:改行を挿入する命令文です。
 ・ここでは5回連続して使います。
Cマクロ終了を知らせる部分です。
 ・message文:メッセージを出す命令文です。
 ・ここでは「処理が終了しました」と表示します(図3)。
Dマクロを終了する部分です。
 ・endmacro文:マクロを終了する命令文です。


 上述の@ACは私がよく使う定型文です。BとDは必須です。Bは動作によって種類も長さも変わります。
 なおマクロの書き方が違っている場合には、実行時にエラーメッセージとエラー箇所(大まかな行数)が出るのでご心配なく。

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2009年12月 1日
42.「秀丸」マクロの作り方(2)

2.マクロ命令文を組み合わせてマクロを自作する(その1)

 秀丸エディタに用意されているマクロ命令文を組み合わせて、自分が必要とするマクロを作ります。このブログで紹介した自作マクロはすべて、この方法で作っています。
 マクロ命令文とは、コンピュータに様々な動作を行なわせるための命令です。詳しくは「秀丸」の「マクロ」→「マクロヘルプ」を参照して下さい(図1、図2)。「マクロを初めて作成する方はこちらへ」は必読です(図2)。



 マクロ命令文「message」(メッセージを出す命令)を例にして書き方を説明します(図3)。

 @基本的に半角の小文字アルファベット、記号、数字で書きます。
 A半角空白とタブ文字は無視されます。マクロを見やすくする字下げとして使います。
 B「"」(ダブルコーテーション)で挟んだ部分は文字列として扱われます(半角空白、タブ文字も)。
 C文の終わりは必ず「;」(セミコロン)です。
 図3のマクロを実行すると、「てすと」というメッセージが出ます(図4)。

 マクロ作成後は、ファイル名「○○○.mac」でマクロファイル用フォルダ(「Hidemarumakuro」など)に保存します。保存後、前回と同じ方法で実行します。
 図3のマクロの場合、ファイル名「てすとマクロ.macro」で保存しています(図5)。保存は、「ファイルの種類」からプルダウンで「秀丸マクロ(*.mac)」を選んで行ないます(図6)。

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2009年12月 1日
41.「秀丸」マクロの作り方(1)

 マクロの作り方についてお話しします。次の3種類があります。
1.キー操作を記録してマクロとして保存する
2.マクロ命令文を組み合わせてマクロを自作する
3.他作のマクロを使う

1.キー操作を記録してマクロとして保存する
 秀丸エディタ上で行なったキー操作を記録してマクロとして保存し、後で実行する方法です。マクロ文を知らなくてもできる簡単な方法です。

(1)「マクロ」→「キー操作の記録開始/終了」(図1)
 これで、キー操作の記録が開始されます。


 記録中は、画面左上に「記録中!」が表示されるので(図2)、記録したいキー操作を行ないます。ここでは「改行(Enter)を5回打つ」操作を行なっています。

(2)「マクロ」→「キー操作の記録開始/終了」(図1)
 これで、キー操作の記録が終了します。
(3)「マクロ」→「キー操作の保存」(図3)
 記録したキー操作をマクロとして保存します。

 マクロファイル用のフォルダ(ここでは「Hidemarumacro」)に保存するための画面が開きます(図4)。適当な名前(ここでは「改行を5回挿入マクロ」)を入力して「OK」をクリックし、保存します。

(4)「マクロ」→「マクロ実行」(図5)
 保存したマクロを実行します。

 マクロファイル用のフォルダ(「Hidemarumacro」)に保存したマクロを選ぶための画面が出ます(図6)。先ほどの「改行を5回挿入マクロ」を選んでOKをクリックすれば、すぐに実行します。

 こうして、図2に示したような改行の5回打ちが自動的に行なわれます。ただし、現在のカーソル位置から改行を打ち始めるので、ご注意を。

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2009年11月 27日
40.もっと「the」を使おう

 ネイティブ(米&英国人の特許翻訳者)に教わった特許和文英訳についてお話しします。

1.クレームの「前記」には「said」ではなく「the」を使う。
 例)「前記レンズ」は、
   「the lens」    ○
   「said lens」   ×

2.クレームの「前記複数」には「the」を使う。
 1回目に出てくる「複数」は「a plurality of」ですが、
 2番目以降の「前記複数」は単なる「the」です。
 例)「複数のレンズ」は「a plurality of lenses」
   「前記複数のレンズ」は、
   「the lenses」           ○
   「said plurality of lenses」   ×
   「the plurality of lenses」    ×

3.クレームでは、構成要件以外については、1回目でも「the」を使う場合がある。
 たとえば、構成要件の固有の性質など。
 例)レンズの直径(the diameter) → wherein the diameter of the lens is 10 mm.
   同焦点距離(the focal length)→ wherein the focal length of the lens is 20 mm.
 ※ただし、「have」を使った表現では「a」を使います。
   レンズの直径(a diameter)  → wherein the lens has a diameter of 10 mm.
   同焦点距離(a focal length) → wherein the lens has a focal length of 20 mm.

4.明細書本文中の「前述」には「the」を使う。
 「前述」とあっても、見て分かるほどに近いことが多く、「the」が適切。
 例)「前述のレンズ」は、
   「the lens」              ○
   「the above described lens」   ×
   「the lens described above」   ×
 ※「above described」等は、明細書のずっと以前に書いたものについて述べる場合に使う。

 以上は、英国人によると "quite modern" な書き方だそうです。

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2009年10月 21日
39.おすすめ情報

 お薦めの本やサイトをご紹介します。

 1.秀丸エディタ&マクロを勉強するための本&サイト
(1)「JIS FORTRAN入門[上]」(第3版)東京大学出版会 ¥2835(図1)
http://www.utp.or.jp/bd/978-4-13-062030-7.html
 マクロの勉強を始める前に、プログラミングの知識があった方が良いと思います。この本は、Q&Aのドリル形式なので非常に読みやすいです。
(2)「『秀丸』を100倍生かす強力マクロの使い方」技術評論社 ¥1449(図2)
http://www.amazon.co.jp/dp/4774120693
 私が秀丸マクロを勉強するときに大変お世話になった本です。


(3)秀シリーズ・サポート・フォーラム http://www.maruo.co.jp/hidesoft/
 秀丸&マクロについて質問することができるウェブ会議室です。
(4)秀丸エディタQ&A集 http://homepage2.nifty.com/jr-kun/hidemaru_qa/
 秀丸ユーザが中心となって作成されました。説明が詳しいです。

 2.利用している情報サイトなど
(1)「富井翻訳ゼミ」 http://www.techlingua.jp/
 技術翻訳全般について、月1回のスクール、年1回の「翻訳フォーラム」、メーリング・リストが運営されています。
(2)「日本翻訳者協会(JAT)」 http://jat.org/
 英語⇔日本語間の翻訳者、通訳者を会員とする組織です。日本人だけでなく、英語を母国語とする会員が多いです。ほぼ月1回の講演会、年1回の日英翻訳国際会議(IJET)、メーリング・リストが運営されています。
(3)Yahooの特許翻訳ML  patent_translation-subscribe@yahoogroups.com
 特許で使う英語について質問すれば、日本/海外のネイティブから回答が得られます。
(4)「Vector」オンライン・ソフト流通サイト http://www.vector.co.jp/
 オンライン・ソフト流通サイトです。ここから新着ソフト紹介の定期配信を受けています。

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2009年10月 14日
38.納品するファイルの実際

 客先に納品するファイルは以下の4つです。
(1)翻訳文(図面訳を含む)            (ワード)(図1:図面訳のみ)
(2)翻訳コメント表                  (ワード)(図2)
(3)図面訳対応表(必要時)            (PDF)(図3)
(4)段落番号対応表(必要時)           (PDF)(図4)

・図面訳は、本文の訳文の最後に加えます(図1)。
 図面に番号を手書きした場合は、その図面をPDFファイルにして送ります(図3)。
・翻訳コメント表は、「頁番号」と「行番号」でコメント箇所を指定が基本です(図2)。
 でも紙原稿に行番号が書かれていない場合などには、紙原稿に手書きした「段落番号」と
 「段落内行番号」で指定します。
 その場合、紙原稿に「段落番号」が手書きされたものをPDFファイルで送ります(図4)。





 これらのファイルを、図5のような電子メールに添付して、客先に送ります(図5)。

 客先によっては、翻訳文に暗号やパスワードをかけて送るように指示してくるところも
 あります。それぞれ客先の指示に従ってください。

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2009年10月 7日
37.記憶しないで記録する

 翻訳中に使うマクロの数は多いです。
 毎回、間違えずに使うように、マクロの順番を紙に書いています。
 以下に、マクロの順番を含む翻訳手順表(和文英訳)を載せます。カッコ内はマクロ名などです。全部で約40項目の作業になります。

和文英訳 手順
■前処理
1.邦文の電子原稿の準備
(1)邦文原稿の余分な改行を削除           (邦文原稿の改行削除マクロ)
(2)英数字のみ→半角、全角/半角の間に半空白 (英数字を半→全/半に半空マクロ)
(3)英文の見出しを入れる                (タイトル挿入マクロ)
(4)邦文原稿の準備(一文単位に分けるなど)    (邦文原稿準備マクロ)
(5)文末チェック                       (和訳文チェック・マクロ)
(6)『ワード』で文章校正                  (ワードF7)
2.邦文の紙原稿の準備
(1)段落番号を書き込む(電子原稿と合わせる)   (【000】⇒連番_削除マクロ)
(2)「明細書」「クレーム」「図面」の書類ごとに、付箋紙をはる
(3)コメントが必要な箇所(訂正など)に、付箋紙をはる
■用語置換/用語選択
1.用語置換
(1)邦文の訂正(必要に応じて)
(2)ファイル種類の変更                   (SimplyTerms)
(3)複数辞書から包括辞書を作成             (SimplyTerms)
(4)用語置換                          (SimplyTerms)
(5)カタカナ和文の英訳                   (カタカナ英訳マクロ)
(6)請求項の番号振り                    (請求項の番号振りマクロ)
(7)半角空白削除(ファイル全体)             (半角空白削除マクロ)
2.用語選択
■用語の並べ換え(翻訳)
1. 英語用語列の範囲選択               (範囲指定マクロ)
2. 英語用語列の反転                  (文字列交換マクロ)
■校正
■後処理
1.翻訳コメントの作成                   (未訳カウント&用語集マクロ)
(1)用語対の削除                      (用語対の削除マクロ)
(2)コメント作成用ファイル整形              (コメント作成ファイル整形マクロ)
(3)用語対のソート                     (用語対のソート・マクロ)
(4)用語対の段落番号検索                (用語対の段落番号検索マクロ)
(5)用語集1列目⇔2列目                 (用語集1列目⇔2列目マクロ)
(6)段落番号&図面訳の対応表のPDF化       (スキャナ・ソフト)
2.翻訳文のチェック
(1)全角文字削除(ファイル全体)             (残文削除マクロ)
(2)文末チェック                        (英文原稿の文末チェック・マクロ)
(3)上/下付き文字と[文字]のチェック         (上下付き文字チェック・マクロ)
(4)「ワード」:文章校正                   (ワード文章校正)+(ワードF7)
(5)納品用ファイル作成、訳文コピー           (納品用ファイル作成マクロ)
(6)「ワード」用に翻訳文整形               (翻訳文整形マクロ)
(7)全角文字残のチェック                 (全角文字チェック・マクロ)
(8)「ワード」ファイルへコピー
(9)「ワード」:上/下付き文字の変換           (ワード・マクロ)
(10)「ワード」:[文字]の変換                (ワード・マクロ)
(11)「ワード」:【段落番号】削除/ボールド        (ワード・マクロ)
(12)対訳ファイルの作成                   (対訳作成・マクロ)

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2009年9月 30日
36.ダミー動詞を使って訳す

 和訳する際に、原文にない動詞(ダミー動詞)をわざと入れて訳すことがあります。
 日本語は、英語に比べて動詞表現が多い言葉なので、動詞を入れることで自然な日本語になる場合があります。
 逆に英訳の場合は、日本語の冗長な動詞をわざと省くと自然な英語になる場合があります。
◆和訳例
・A flow rate of the purge gas from the purge system is about 300 L/min.
 パージ・システムから"出る"パージ・ガスの流量は約300L/分である
・τ can be selected to reduce errors due to variations of τ along the measurement beam paths.
 τは、測定ビーム経路に沿って"生じる"τの変動による誤差が減るように、選ぶことができる。
・We have investigated the SEI film on the surface of nano-SnO electrode by TEM.
 ナノSnO電極の表面に"設けられた"SEI膜をTEMによって調べた(SEI:固体電解質界面、TEM:透過型電子顕微鏡)。

◆英訳例
・装置は、反応容器内に"設けられた"プラズマ生成部を備えている。
 The equipment includes a plasma generation portion in the reaction chamber.
・第1の回路から"出力された"第1の信号を第2の回路に供給する。
 The first signal from the first circuit is supplied to the second circuit.

 ダミー動詞とは、それ自体は意味の希薄な動詞/冗長な動詞だと考えています。
 例)設けられる、形成される、生成される、供給される、出力される、行なわれる、用いられる、存在する、位置する、起こる、生じる等。

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2009年9月 23日
35.原文の語順に沿って訳す

 和訳にしろ英訳にしろ、原文の語順に沿って訳すようにしています。
 原文の語順に沿っていれば、読みやすいだけでなく、顧客のチェックも楽です。特に英文和訳の場合にそうです。
◆和訳例
(1)動詞を先に訳す
  ・Haze can be measured by many commercially available haze-meters.
   ヘイズの"測定"は、多くの市販のヘイズ・メータによって行なうことができる。
(2)「have」を「〜の」と訳す
  ・The energy shift has a maximum value of approximately 590 meV.
   エネルギーシフト"の"最大値は、約590meVである。
  ・The high-k material has a dielectric constant greater than that of silicon dioxide.
   高k材料"の"誘電率は、二酸化ケイ素のそれよりも大きい。
(3)「こと」「もの」「場合」と訳す
  ・Another cause can be a sensor that has drifted out of the normal endpoint window.
   他の原因は、センサが正常な終点ウィンドウの外へドリフトした"こと"であり得る。
  ・Elastic cylindrical tube-like elements wrapped by a metal layer are inserted.
   弾力性のある円筒形のチューブ状要素を金属層で包んだ"もの"が、挿入される。
  ・For light centered about 70 degrees, almost all of the light is directed towards the left eye.
 光の中心が70度付近にある"場合"、光のほとんどすべては左目に向けて送られる。

◆英訳例
  ・読み出しデータの "反転" は、次のようにして行われる。
   The read data is "inverted" as follows.

 なおこの方法は、文脈に応じて使うことをお薦めします。

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2009年9月 15日
34.原文を分割して訳す

 私はできるだけ、長い文章は分割して訳すようにしています。自分の校正も顧客のチェックも楽になります。また原文の語順にも沿っています。
◆和訳例
・Exemplary organic solvents include, but are not limited to, methanol, ethanol,...
 代表的な有機溶媒には以下のものが含まれる(しかしこれらに限定されない)。メタノール、エタノール・・・。
・The laser is more stable than those known in the prior art because there are less elements to thermally stabilize.
 レーザは、従来技術で知られているものよりも安定である。なぜならば、熱的に安定させるべき要素が少ないからである。
・Examples of an imaging system are described in U.S. Patent ..., all of which are incorporated herein by reference.
 撮像デバイスの例が以下の文献に記載されている。米国特許・・・。なおこれらの文献はすべて本明細書において参照により取り入れられている。

◆英訳例
 英訳の場合、1つの文章には1つの内容だけを入れるように心がけています。またクレームでは「分詞」を使って分割する方法をお薦めします。

・半導体素子は、複数のメモリセルをマトリックス状に配置してなるメモリセルアレイを備えている。
 The semiconductor device includes a memory cell array.
 The memory cell array includes a plurality of memory cells disposed in a matrix.
・入力端子と出力端子との間に電流経路を形成するように接続された出力トランジスタ(クレームの一部)
 an output transistor connected between the input terminal and the output terminal,
 the output transistor forming a current path between the input and output terminals.

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2009年9月 9日
33.「秀丸」の引越し

 新PCを購入した場合など、「秀丸」エディタの引越しは次の様にします。こうして各種設定情報(「動作環境」など)を移すことができます。設定が同じでないとマクロの動作が変わることもあるため、要注意です。
 なお以下の名前は一例です。
・「Hidemaru」      :「秀丸」自体が保存されているフォルダ
・「Hidemarumacro」   :マクロ・ファイル用のフォルダ
・「設定情報(2009_7_11)」:設定情報のファイル

1.旧PCで設定情報を保存する
(1)「その他」→「設定内容の保存/復元」(図1)


(2)「設定情報をファイルに保存する」にチェック(図2)

(3)設定情報を保存する(図3)
 ・「Program Files」→「Hidemaru」→「設定情報(2009_7_11)」

2.次のフォルダを新PCにコピーする(by USBメモリなど)
 ・「Program Files」→「Hidemaru」と「Hidemarumacro」
3.新PCで設定情報を復元する
(1)「秀丸」自体を開く:「Program Files」→「Hidemaru」→「Hidemaru」
(2)必要により、「送金登録」「送金した」「作者から教わった暗証番号」等を入力する
(3)「その他」→「動作環境」→「環境」→「パス」で、以下のフォルダ名を確認する。表示されていなかったら、「参照」ボタンを押して入力する(図4)
  @ マクロファイル用のフォルダ C:\Program Files\Hidemarumacro
  A 設定ファイル用のフォルダ  C:\Program Files\Hidemaru

(4)設定情報を復元する
  @「その他」→「設定内容の保存/復元」(図1)
  A「設定情報をファイルから復元する」にチェック(図5)
  B 設定情報のファイルを開く
 ・「Program Files」→「Hidemaru」→「設定情報(2009_7_11)」

 なお詳細は、「その他」→「秀丸エディターヘルプ」(目次:移行の手引き)を参照して下さい(図6)

 こういう作業にも、「○○引越センター」のような「お任せパック」があったら便利ですね。

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2009年9月 2日
32.自作「ワード」マクロの紹介

 ワード上で動かす「ワード」マクロについてご紹介します。
(1)上付き/下付き文字への変換(図1)
 以前に述べたように、「秀丸エディタ」は上付き/下付き文字が扱えないので、代わりに、対象文字を「↑↑」「↓↓」で挟んだ文字を使っています。これらの文字を上付き/下付き文字に一括変換します。


(2)段落番号の削除(図2)
 「秀丸エディタ」で作成した訳文には段落番号[xxxx]が付いています。顧客によっては段落番号を付けないので、番号を一括削除します。

(3)翻訳コメント表の作成(図3)
 31.で述べたように「紙原稿での頁番号、行番号、用語(誤記文など)、コメント文」からなるコメントをワード・ファイルにコピーした後、このマクロを動かして一発で表にします。

 なおここで述べたワードマクロは、簡単な方法で作っています。「新しいマクロの記録」を使って実際の作業手順を記録するだけの方法です(図4)。
 ワード・ファイルの「ツール(T)」→「マクロ(M)」→「●新しいマクロの記録(R)」を選んで行ないます。詳細は割愛します。

 「秀丸」マクロだけでなく「ワード」マクロも用いることで、翻訳作業の自動化が一段と進みます。

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2009年8月26日
31.コメント作成マクロ(2)

(2)コメント箇所表示マクロ
 翻訳後に、各コメント対(誤記文+コメント文)に対して、誤記文の紙原稿での頁番号と行番号(コメント箇所)を表示させます。
 まず、訳文ファイルの最後に作ったコメント対を別のファイル(コメント・ファイル)にコピーして、原文ファイルと並べます(図1)。


 英文の紙原稿も用意します(図2)。すでに述べたように、紙原稿には段落番号を手で書き込んであり、原文ファイルと合わせてあります。

 コメント・ファイル上でマクロを動かすと、誤記文を範囲選択して、確認メッセージが出ます(図3)。メッセージ中の「別の画面」とは原文ファイルのことです。

 「OK」をクリックすると、同じ誤記文を原文ファイル中で探し、「この用語でOK?」と聞いてきます(図4)。

 OKを選ぶと、この誤記文が原文ファイルの段落番号「0018」の中にあることが示されます。同時に、誤記文の紙原稿での頁/行番号を入力するように促します(図5&図6)。
 そこで紙原稿の「段落番号18」を参照すると、誤記文は紙原稿の「5頁12行目」にあることが分かります(図2)。これらの値を入力します。


 入力後に「OK」をクリックすると、コメント・ファイルのコメント対の前に、紙原稿での頁/行番号が挿入されます(図7)。そして次の誤記文(「teleconference」)を範囲選択します。

 こうして同じ処理を繰り返して、すべてのコメント対に対して紙原稿での頁/行番号が表示されます。

 最後に、これらのコメントをワード・ファイルにコピーしてコメント表にします。作表は「ワード・マクロ」で行ないます(後述)。
 こうして、翻訳後にコメント表を簡単に作ることができます。とても重宝するマクロです。

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2009年8月19日
30.コメント作成マクロ(1)

 コメントを簡単に作るための自作マクロについてお話しします。

 いま原文ファイルに誤記文が見つかったとします(図1)。「parting」は「departing」の間違いです。このとき、誤記文を訂正して訳したというコメントを客先に出します(図2)。表中の「頁番号」「行番号」は、原文ファイルではなく紙原稿でのコメント箇所(誤記文の箇所)です。



 今回のマクロは、図2の「頁番号」「行番号」「用語(誤記文)」「コメント」を半自動的に作成するマクロです。
 2つの自作マクロを使います:(1)コメント文作成マクロ(2)コメント箇所表示マクロ。

(1)コメント文作成マクロ
 原文ファイル上で誤記文を範囲選択してマクロを動かします。誤記文を確認するメッセージが出ます(図3)。メッセージ中の「相棒ファイル」とは訳文ファイルのことです。


 「OK」をクリックすると、誤記文を訂正する画面が出ます。「parting」を「departing」に訂正します(図4)。

 「OK」をクリックすると、コメント文の内容を聞いてきます(図5)。
 @コメント:原文通り(原文通り訳したというコメント)
 Aコメント:訂正する(訂正して訳したというコメント)
 Bコメント:その他 (その他の任意のコメント)
 ここでは「Aコメント:訂正する」を選びます。

 コメント内容を選ぶと、誤記文とコメント文が表示されます(図6)。

 「はい」をクリックすると、訳文ファイルの最後に、(誤記文(タブ・スペース)コメント文)が作成されます(図7)。

 こうして翻訳中に、誤記文とコメント文のペアを簡単に作ることが出来ます。なお図7には、前述したように用語対を翻訳コメントとして利用した場合も示します。
 次回、(2)コメント箇所表示マクロについて述べます。

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2009年8月13日
29.「マイ用語集」蓄積マクロ(2)

 (2)用語置換とは別に用語対を作成するマクロ
 訳文ファイル中で、一括置換後に複合語が部分的にしか置換されていない場合には(図1)、訳語への置換を行なう前に、原文ファイルから用語対を作成します。


 原文ファイル上で、対象とする複合語(ここでは「coherent demodulation」)を範囲選択してマクロを動かします。検索語を確認するメッセージが出ます(図2)。メッセージ中の「相棒ファイル」とは訳文ファイルのことです。

 「OK」をクリックすると、訳語を入れる画面が出ます。辞書で調べた訳語「コヒーレント復調」を入れます(図3)。

 「OK」をクリックすると、訳語の両端に入れる記号を選ぶ画面が出ます(図4)。訳語と両端の記号の関係は前回の図5の通りです。

 ここでは、訳語にカタカナが含まれているので「カタカナ名詞:「・」」を選びます。
 記号を選ぶと、原語と訳語を確認する画面が出ます(図5)。

 「はい」をクリックすると、訳文ファイルの最後に(coherent demodulation(タブ・スペース)・コヒーレント復調・)という用語対が作成されます(図6)。なお図6には、前回作った用語対も示します。

 こうして用語対を作成した後に用語置換を行ないます。すなわち、訳文ファイル上で部分的にしか置換されていない複合語を、ファイル全体で「・コヒーレント復調・」に置換します(図7)。

 前回と同じく、訳文ファイルの最後に作った用語対をコピーして「マイ用語集」に追加し、簡単に「マイ用語集」が増えていきます。また用語対は翻訳コメントとしても利用できます。

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2009年8月5日
28.「マイ用語集」蓄積マクロ(1)

 以前に述べました「マイ用語集」に加える用語対を、翻訳中に簡単に作成できる自作マクロについてお話しします。2つの場合があります:(1)用語置換と同時に作成(2)用語置換とは別に作成。

(1)用語置換と同時に用語対を作成するマクロ
 訳文ファイル中で、一括置換後に残った用語(ここでは「teleconference」)(図1)を訳語に置換すると同時に用語対を作成します。


 訳文ファイル上で「teleconference」を範囲選択してマクロを動かします。検索語を確認するメッセージが出ます(図2)。

 「OK」をクリックすると、置換語(訳語)を入れる画面が出ます。辞書で調べた訳語「遠隔会議」を入れます(図3)。

 「OK」をクリックすると、置換語の両端に入れる記号を選ぶ画面が出ます(図4)。
 置換語と両端の記号の関係は図5の通りです(図5)。


 いろいろな記号を使う理由は、以前に述べたように、用語反転などで使うためです。ここでは「(置換語の両端) --な し-- 」を選びます。
 記号を選ぶと、置換方法を選ぶ画面が出ます(図6)。
 「単語置換」は検索語を単語単位で探して置換。「文字列置換」は検索語を文字列で探し、単語の一部であっても置換。ここでは「単語置換」を選びます。

 置換方法を選ぶと、訳文ファイル全体で「teleconference」が「遠隔会議」に置換されます。同時に訳文ファイルの最後に、(teleconference(タブ・スペース)遠隔会議)という用語対が作成されます(図7)。なお図7には、置換語の両端に他の記号が入った場合も示します。

 これらの用語対をコピーして「マイ用語集」に追加します。こうして翻訳をする度に簡単に「マイ用語集」が増えていきます。
 なお訳文ファイルの最後に作成した用語対は、翻訳コメントとしても利用できます。

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2009年7月23日
27.自作「秀丸」マクロの紹介(2)

(1)段落番号の自動付与(図1)
 明細書の各段落には段落番号を付けますが、この番号を付け直すときに使います。
 不要になった段落番号は削除し、新しく番号を付ける段落の頭には「★」を加えます。そしてこのマクロで処理すると、残りの段落番号と「★」とをひとまとめにして、連続した段落番号に変えます。


(2)未訳文章カウント(図2)
 翻訳の進み具合が把握できると、納期に合わせた作業がしやすくなります。
 そこで、未訳文章の行数をカウントして、全体に対する割合を示せるようにしています。行数のカウントは、全角と半角が混在する文章の行数を数えて行ないます。
 また未訳文章の個数を行数別に示して、翻訳の難易度(長い or 短い文章が多い)が分かるようにしています。
 英訳、和訳の両方に使えます。

(3)未訳文章の検索(図3、図4)
 未訳の文章を、行数を指定して検索することができます。
 こうすると、不慣れな分野を翻訳するときに行数の少ない文章(1〜2行)から始めることができるため、翻訳を効率的に進めることができます。
 英訳、和訳の両方に使えます。


(4)年月日の自動和訳(図5)
 特許文献の出願/発行年月日などを、自動的に和訳(西暦に)します。
 年月日を示す英文を範囲選択してマクロ処理するだけで翻訳されるため、翻訳時間が大幅に短縮されるとともに誤訳の危険がなくなります。

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2009年7月13日
26.自作「秀丸」マクロの紹介(1)

 その他の「秀丸」マクロについてご紹介します。

 (1)明細書タイトルの挿入(図1)
 特許明細書では、タイトル(見出し)が決まっています。これを毎回タイプするのは面倒です。タイプミスにもつながります。
 そこでタイトルの一覧を出して、選択したタイトルを挿入できるようにしています。
 図1は和訳用タイトルの一覧です。英訳用タイトルの一覧もあります。

 (2)タイトルへのジャンプ(図2)
 訳文ファイル内を移動する際に、各タイトルにジャンプできると便利です。
 そこでタイトルの一覧を出して、選択したタイトルにジャンプできるようにしています。
 図2は英訳用タイトルへのジャンプです。和訳用タイトルへのジャンプもあります。


 (3)顧客のフォーマット(図3)
 翻訳文や請求書のフォーマットは、顧客ごとに違います。
 そこで顧客のフォーマットを一覧にして、選択したフォーマット(ワードファイル)が開くようにしています。

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2009年6月25日
25.過去の訳文を利用する

 翻訳が終わった後、原文と訳文を結合して「対訳ファイル」を作成しています(図1)。
 対訳ファイルは、英訳のときも和訳のときも作成します(図1は和訳)。自作マクロで行ないます。


 後日の翻訳のときに、「grep検索」を行なって過去の対訳を参照できるようにしています(図2、図3)。これも自作マクロです。


 「grep検索」とは、複数のファイル内を検索して、検索語を含む文章を一覧表示するものです。各文章にはファイル名と行番号が示されます。また表示された文章上にカーソルを置いて[その他]→[タグジャンプ]を選ぶと、そのファイルのその行にジャンプすることができます。

 こうして、翻訳メモリほどの高機能ではないのですが、過去の翻訳文を利用して翻訳の効率を上げることができます。特に、特許明細書に特有の表現などの場合は、過去の翻訳文をそのまま利用できることが多いため重宝します(図3)。
 以前にお話しした「マイ用語集」は今までの訳語を集めた用語集でしたが、「対訳ファイル」は今までの翻訳文を集めた対訳集です。

 今は「エコ」の時代。翻訳業も訳文をリサイクルする「モッタイナイ」精神が大事です。

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2009年6月13日
24.複数の用語集を使う

 「SimplyTerms」を使った一括置換では、主に使う用語集は「マイ用語集」です(今までの翻訳仕事の中で貯めた用語集)。
 しかし置換を効率的に行なうために、客先別、分野別の用語集などを合わせて使うことをお薦めします。

 以前に述べたように、用語集とは「英語−日本語」のセットを並べたものです。
 「SimplyTerms」では、複数の用語集を排他的に合体させることができます。
 「排他的な合体」とは、複数の用語集に優先順位をつけて、高順位に低順位を追加していきますが、高順位の用語集にすでに(英語−日本語1)の対があったら、低順位に(英語−日本語2)があっても追加されないことです。
(1)具体的な作業は以下の通り(図1)。
  ・「用語集」タブを開いて「用語追加(排他)」にチェックを入れる。
  ・「追加する用語集」と「追加される用語集」の欄にそれぞれ用語集をドロップして、実行させる。
(2)「追加する用語集」には、たとえば次のような順位で用語集を入れます。
  @客先別用語集(客先から配布された用語集/客先ごとにまとめた用語集)
  A分野別用語集(インターネットなどから収集した分野ごとの用語集)
  Bマイ用語集(これまでの翻訳仕事で貯めた用語集)
(3)「追加される用語集」には、合体用語集(空ファイル)を入れます。


 実行させれば、3つの用語集が合体された合体用語集が作成されます。この用語集を使って翻訳原文(たとえば英語)に一括置換を行ないます(図2)。

 このように複数の用語集を使って置換すれば、訳語の正確さが高まり、置換後の用語選択の作業も軽減されます。

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2009年5月28日
23.「上書き翻訳」のすすめ(6)

(4)「校正」
 対訳形式で原文と比べながら校正します。
 訳抜けの心配が少ないので、訳文の内容のチェックに専念できます。

(5)「後処理」
 校正後の翻訳文に次のような後処理を施します。その後、ワード・ファイルにコピーして電子メールで納品します。処理@〜Bは秀丸マクロによる半自動処理です。
@文末チェック
 各文章が句点「。」で終了していることをチェックします。
 句点が抜けている場合は「。」を挿入し、読点「、」等で終了している場合は「。」と置換します(図1)。


A上付き/下付き文字チェック
 「秀丸エディタ」は、上付き/下付き文字が扱えないので代替字を使います。代替字が正確に使われていることをチェックします。代替字は、上付き用文字を「↑ ↑」で挟んだもの、下付き用文字を「↓ ↓」で挟んだものです(図2)。
 代替字は、後述するようにワード・マクロを使って上付き/下付き文字に変換します。

B翻訳文整形
 バラバラになっている翻訳文をまとめて、特許明細書の体裁に整形します(図3)。

Cワード・ファイルへコピー
 整形された翻訳文を、「秀丸」から「ワード」へ手動でコピーします。
 ワード上では、ワード・マクロを使って、前述した上付き/下付き文字を作成し、また必要に応じて段落番号を削除します。
 和文英訳の場合には、必ず文章校正(F7キー)を行ないます。
D翻訳コメント・ファイルの作成
 翻訳中に作成した翻訳コメントをまとめて、翻訳文とは別のワード・ファイルに作成します。

 こうして作成した翻訳ファイルと翻訳コメント・ファイルを、電子メール添付で客先に送ります。

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2009年5月13日
22.正規表現による検索と置換

 翻訳する際、訳文の文字列を検索・置換することは多いです。

 「秀丸エディタ」では、正規表現による「一網打尽」の検索・置換ができるのでとても便利です。ここでいう正規表現とは文字列のパターンを記号で表したものです。たとえば記号"[0-9]"は、数字0〜9をすべて表しています。
 普通の検索では、数字"1"を検索したら"1"しかヒットしませんが、
正規表現では、記号"[0-9]"を検索すれば"0"、"1"、… "9"がすべてヒットします。

(1)正規表現による検索例(図1&図2)
 明細書中で"1図"、"2図"、…を探す場合、文字列"[0-9]図"を検索します(便宜上、数字"0"も含めます)。
 こうして、"1図"、"2図"、… "9図"がすべてヒットします(なお、検索画面で「正規表現」のチェックを忘れずに行なう必要があります)。



(2)正規表現による置換例(図3&図4)
 "\f"(区切り記号)を使った置換がとても重宝します。
 明細書中で"1図"、"2図"、…をそれぞれ左右逆にして、"図1"、"図2"、…とする場合、次のように置換します。
 検索語:"[0-9]\f図"(=\0\1)
 置換語:"\1\0"
 検索語"[0-9]\f図"は、前述の"[0-9]図"を記号"\f"で区切ったものです。こうすると、置換語において、左側の"[0-9]"を記号"\0"で表し、右側の"図"を"\1"で表して、"\0\1"と書くことができます。そして置換語で、"\1\0"と逆順に書けば、"[0-9]図"を左右逆にして"図[0-9]"とすることができます。


 このような正規表現を使った検索と置換は、後で述べる秀丸マクロにおいて中心的な役割を果たします。

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2009年3月29日
21.フリーソフトの紹介(2)

(1)「Soda」(図1)
http://www.vector.co.jp/soft/winnt/util/se443036.html
 ファイルを保存するときのフォルダの選択が簡単になります。
 電子メール添付のファイルなどを保存するときに、事前に登録したフォルダを即座に開けることができます。
 基本的な使い方は、以下の通り。
 @ファイルを保存するための画面を出す。
 A一番上のタイトルバーをクリックして登録フォルダメニューを出す(図1の赤い囲み)。
 B希望するフォルダをクリックして開く。
 このソフトは、保存済みのファイルを開くときにも使えるため、とても便利です。


(2)「CLCL」(図2)
http://www.vector.co.jp/soft/win95/util/se075069.html
 クリップボードの履歴を残し、定型文を登録することができます。
 客先メール文などが登録できて便利です。

(3)「Multi Function Alarm」(図3)
http://www.vector.co.jp/soft/win95/personal/se057446.html
 設定した時刻に、設定したメッセージが出ます。
 毎日の時間管理に役立ちます。

(4)「SetCaretColor」
http://www.vector.co.jp/soft/cmt/winnt/writing/se429127.html
 カーソルの点滅が、日本語のときに赤、英数字のときに青になります。
 ちょっとしたことですが、とても重宝しています。

(5)「Vector」(オンライン・ソフト流通サイト) http://www.vector.co.jp/  ここから新着フリーソフトの定期配信を受けています

 フリーソフトと言っても、とても強力なものが出回っており、あなどれません。
 「タダほど使えるものはない」のです。

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2009年3月15日
20.フリーソフトの紹介(1)

 私が重宝しているフリーソフトをご紹介します。

(1)「かんざし」(図1:以下のウェブサイトより)
(正式版)
http://homepage1.nifty.com/uchiyama-takanori/kanzasi/index.html
(ベータ版) http://homepage1.nifty.com/uchiyama-takanori/kanzasi/beta.html
 複数の電子辞書の一括検索ソフトです。
 私の場合、英辞郎、DDWIN(ランダムハウスなど5辞書を含む)、Bookshelf Basic(ver2.0)を「串刺し」しています。
 また私は、自作の「秀丸エディタ」マクロを使って、「秀丸」で編集中の単語を選択すれば、検索と同時にブラウザ上でGoogle検索もできるようにしています。

(2)「ちゃうちゃう」(図2、図3)
http://www.monjunet.ne.jp/ChawChaw/Chaw2110.exe
 テキスト比較ソフトです。
 特許明細書では、クレームとほとんど同じ文章が明細書に現れることが良くあります。このソフトを使えば、文章の一致を即座に確認できるため、安心して訳文をコピーすることができます。
 図2は比較する前、図3は比較した後です。違っている文章だけ色が変わるので、テキストの一致/違いがすぐに分かります。


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2009年3月1日
19.周辺機器のはなし

 私が使っている周辺機器についてお話しします。
(1)ダブル・モニタ
(2)ワイヤレス・マウス/キーボード
(3)複合機

(1)ダブル・モニタ(図1)
 これは、パソコン1台にモニタを2台つなぎ、2つの画面間をカーソルが行き来できるようにして、2画面をワイド画面のように使うものです。市販の2出力のビデオ・カード(数千円)をパソコンの裏に差し込み、付属ソフトを設定するだけです。
 左の画面で、対訳形式で翻訳しながら、右の画面で、電子辞書&ブラウザを開いて検索します。左のファイルでコピーした英単語を、そのまま右の辞書・ブラウザにペーストして検索できるため、とても楽です。
 ちなみに左は22インチ・ワイドモニタ、右は19インチ・モニタです。


 左のディスプレイの左側には原稿台を2つ置いています(図2)。 原稿台には明細書と請求項のページを置き、机上には図面を置いています。

(2)ワイヤレス・マウス/キーボード(図1)
 マウスはワイヤレスがお薦めです。コード付きだと図面等がコードを踏んで煩わしいです。
 キーボードは、マイクロソフト社の人間工学デザインのものを使っています。キー配列が「Vの字」になっていて、腕を自然に載せることができます。

(3)複合機(図3)
 プリンター、コピー、スキャナー、ファックスを兼ねています。私はブラザー製のモノクロ・レーザー複合機を使っています。この製品には、紙原稿をスキャンしてPDFにする機能もあるため、前にお話ししたFAX文書をPDFにすることもできます。


 ハードにはお金をかけて、翻訳をイージーにしましょう。

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2009年2月4日
18.「上書き翻訳」のすすめ(5)

(3)「翻訳」
 用語選択された英語/日本語の混在文から、日本語を並べ替えていきます。
 次のマクロを主に使います。
(A)日本語だけを範囲選択するマクロ
(B)日本語の並びを反転させるマクロ

 まず日本語にカーソルを置きます(図1の@)。
 マクロ(A)を動かすとその日本語が範囲選択されます(A)。
 もう一度マクロを動かすと、英語列(which can be)を飛ばして、次の日本語列まで範囲選択されます(B)。
 もう1度マクロを動かすと、英語列(in a)を飛ばして、次の日本語列まで範囲選択が広がります。
 マクロを動かす度に、日本語だけが範囲選択されます。

 この状態でマクロ(B)を動かすと、特定の英語(in、which などの前置詞、関係代名詞等)を境にして、日本語の並びが反転された文章が示されます(図2)。特定の英語は自動的に訳文に置換されます(in →「における」、(which)→「/」)。

 「はい」をクリックすると、「における」や「/」という訳語が個別に訂正できるようになります(図3)。

 「における」はそのままで「/」を削除しました。「OK」をクリックすると、訂正後の文章が示され、他の箇所も訂正できるようになります(図4)。

 「a」や「can be」を削除し、「用いられる」→「用いることができる」と訂正しました。「OK」をクリックすると、図4の混在文がこの訂正文に置換されます。同じ置換を文書全体で行なうか聞いてきます(図5)。「OK」をクリックすると、文書全体で置換が行なわれます。

 以上のようにして、英語/日本語の混在文から、日本語を並べ替えて翻訳していきます。

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2009年1月15日
17.「上書き翻訳」のすすめ(4)

(2−2)「用語選択」
 用語置換した文章に、最適な用語(訳語)の選択などを行ないます。

 最初に、自作マクロを使って次のことをします。
・数字/記号と、大文字の英字の略語(上図の24行目のDLP、LCD等)を全角にします。
・不要な文字(the、不要な「・」、不要な「--」など)を削除します。

 次に、複数の訳語から適切なものを選択します。
 もし適切な訳語が見つからなかったら、辞書で調べて入力します。
 置換されずに英語のままの用語(上図の11行目の ribbon )も辞書で調べて置換します。
 こうして新しく入力/置換されたものは、訳文ファイルの最後に「英語(タブ・スペース)日本語」として書き込まれます(自作マクロ)。


 この「英語(タブ・スペース)日本語」のセットをコピーして用語集に追加します。こうして、翻訳をする度に用語集が増えていきます。

 図1のように用語選択された英語/日本語の混在文から、日本語を並べ替えて翻訳文にしていきます。

 前にも言いましたように「上書き翻訳」は「タイプレス」な方法です。訳抜けが激減します。「タイプレス」な翻訳にして「タイプミス」な翻訳をなくしましょう。

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2009年1月15日
16.「上書き翻訳」のすすめ(3)

(2−1)「用語置換」
 バラバラにした文章に「SimplyTerms」を使って用語置換をします。

 置換は用語集を使って行ないます。用語集は「英語(タブ・スペース)日本語」のセットを並べたものです。

 用語集は、自分のこれまでの翻訳仕事の中で貯めたものです。現在、英文和訳25000セット、和文英訳用6000セットあります。

 「SimplyTerms」は次のように働きます(英文和訳の場合)。
・「英語」→「日本語」に置換(複数形は「日本語@@pl」に置換)。
・「英語(タブ・スペース)日本語1」、「英語(タブ・スペース)日本語2」と2つ以上あったら、
 「英語」→「日本語1@@日本語2」に置換。

 また私は、用語集の「日本語」の登録を次のようにして、使いやすくしています。
・「日本語」がカタカナなら両端を「・」(中黒)で挟みます。訳文中でカタカナが続いても「・」で区切るためです。
・「日本語」が動詞なら両端を「--」で挟みます。後の翻訳ステップのときに「--」の前後で日本語の並びを反転させるためです(自作マクロ。後で説明します)。
・「日本語」の数が多かったら「日本語1/日本語2/日本語3…」とつなげます。これは訳文中の「@@」の数を減らして見やすくするためです。

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2008年12月18日
15.「上書き翻訳」のすすめ(2)

この翻訳スタイルは、毎回、5つのステップで行なっています。
 (1)「前処理」
 (2)「用語置換/用語選択」
 (3)「翻訳」
 (4)「校正」
 (5)「後処理」
 各ステップについて、英文和訳を中心に述べていきます。

(1)「前処理」:電子データで用意した原文を、翻訳しやすい形にします。
−まず紙原稿と照らし合わせて、電子データに漏れがないかチェックします。
特に、段落の区切りが合っているかどうかを調べます。
−次に、各【見出し】を手で挿入します(【書類名】明細書、【背景技術】など)。
−次に、各文章を分解してバラバラにします。同時に、各段落に段落番号を付与します。
これらは自作マクロで行なっています。
−紙原稿にも段落番号を手で書き込んで、電子データと合わせておきます。
こうして、翻訳中に紙原稿の翻訳箇所がすぐに分かるようにします。
 ・電子データに漏れなどがあったときに、すぐに紙原稿を参照することができます。
 ・翻訳コメントを書くときに、紙原稿のページと行番号をすぐに見つけることができます。

 何ごとも「下ごしらえ」は大事です。紙原稿と電子データを合わせておくなど、前処理に時間をかけておくと、後で大きな時間の節約になります。

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2008年11月10日
14.原文に忠実(2)

 和文英訳の場合、フリー特許翻訳者の立場は微妙です。
 自然な英語を目指しながらも、原文に忠実な英語も求められます。

 英語ネイティブの翻訳者や日本人の勤務翻訳者ならば、自然で読みやすい英語を一番に考えて、原文の用語や構造を変えることも許されるかも知れません。でも日本人のフリー翻訳者の場合、原文から大きく離れることは許されないでしょう。

 読みやすくかつ原文に忠実な英語を実現するための折衷案として、私は以下のことを心がけるようにしています。

−読みやすい英語にするために
・誤字、脱字、文法またはロジックが違っている文章は修正して訳す(コメントを付ける)。
・長い文章は分割して訳す。ためらわずに小学生の作文のように短くして、できるだけ1つの文章には1つの内容しか入れないようにします。これだけで、ずいぶんと読みやすくなります。ただし単純に分割するだけでは原文と意味がずれることもあるので、文章の補足が必要。

−原文に忠実な英語にするために
・用語(特に名詞)の語順はできるだけ保つ。たとえば受動態は受動態のままに、原因と結果の順番もそのまま訳す。
・冗長な文章などの場合は、どこまで修正して良いか、顧客ごとに確かめる(コメント付きで修正して反応を見るなど)。

 こうしてでき上がる英語は、英語ネイティブから見るとやや不自然かも知れません。でも日本人にはチェックしやすい英語となるでしょう。こういうトレード・オフ(妥協)な英語も、日本人が日本人に納品する場合には、必要な品質ではないかと思います。

 フリー翻訳者は板ばさみにあう立場です。黒子でありながら白黒はっきりしない存在だと思います。

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2008年10月7日
13.「上書き翻訳」のすすめ(1)

 私の翻訳スタイルは、「用語集を使って一括置換をする上書き翻訳」です。

 これは、英文和訳では、英文の用語を一括置換して英語/日本語の混在文にしてから日本語を並べ替えるものです。和文英訳では、和文の用語を一括置換して英/日の混在文にしてから英語を並べ替えます。置換は、英語/日本語対の用語集を使って行ないます。
 実際には、画面上で左に原文、右に混在文のファイルを開いて対訳形式で進めます。

 この方法には多くのメリットがあります。
(1)訳抜けが激減する
  ・特に化合物名や数字の入力漏れ/入力ミスがなくなる
  ・訳抜けチェックが楽になるので、内容チェックに時間をかけられる
(2)訳語が統一される
(3)いろいろな用語集/辞書が利用できる
  ・これまでの訳語を集めた用語集が使える(新しい訳語も追加できる)
  ・顧客ごとに用語集を作成できる
  ・顧客から配布された辞書が使える
(4)入力の手間が省ける
  ・翻訳スピードが上がる

@用語集を使った一括置換は、次のソフトで行なっています。
 「SimplyTerms」(フリーウェア)
http://homepage2.nifty.com/buckeye/software/transtools.htm#simplyterms

A英/日の混在文から日本語 or 英語をスムーズに並べ替えるために、自作の秀丸マクロを使っています。
  ・混在文の中で日本語 or 英語だけを選んで範囲指定するマクロ
  ・日本語 or 英語の単語の並びを反転させて訳文にするマクロ

 この方法では、訳文をタイプすることが激減します。すでに「ペーパーレス」をお勧めしましたが、「タイプレス」で労力を削減して省エネに努めましょう。

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2008年9月5日
12.ペーパーレスのすすめ(2)

 私は、これまでは納品時にFAXで送っていた文書も、PDF(Portable Document Format)に変換してメール添付で送るようにしています。
 このような文書は、たとえば「図面訳の番号表」です。
 図面訳は、図面の用語の番号と訳語を、別シートに並べて書くのが普通です。が、用語に番号がない場合には、図面に番号を手書きした上で、その番号と訳語を並べて書きます。この番号を手書きした図面を、「図面訳の番号表」として客先に送る必要があります。
 このようなFAX文書もPDFにしてしまえば、翻訳文を含む全ての文書が電子ファイルで扱えるので、翻訳者だけでなく客先も楽です。

 文書をPDFにするにはOCR装置(スキャナ、複合機等)とPDF作成ソフトが必要です。
 OCR装置としては複合機をお薦めします。私はブラザー製MFC-5100Jを使っています。
 PDF作成ソフトについては、なかなか良いものがありません。次の条件に合うものを見つけるのに苦労しました。
@いろいろな機種(スキャナ、複合機等)に対応する
A2枚以上の文書を1つのPDFにまとめられる
B無料または安価(≦5千円)である
 次のソフトがお薦めです。
「Paper 2 PDF 1.0」(CAD-KAS社:ドイツ)
http://www.cadkas.com/
(20米国ドル:約2300円)

 KAS社の画面は、日本語でデモ版のダウンロードと正規版の購入ができます。正規版を購入すると、手続き完了後に、正規版のダウンロードURLが通知されます。デモ版も正規版も日本語です。しかし英語の方が分かりやすいので、正規版を購入後にKAS社にメールして英語版を送ってもらうことをお薦めします。

*前回のブログ(11)は、タイトルおよび内容に一部変更があります。

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2008年7月8日
11.ペーパーレスのすすめ(1)

 原文は電子ファイルで用意します。

 原文をワード・ファイルでもらえる場合は、それを「秀丸」ファイルにコピーすれば済みます。そうでない場合は、以下のようにして原文の電子ファイルを作成します。
(1)紙原稿から読み込む
 和文英訳/英文和訳とも、OCRにかけて電子データにします。ただしFAXでもらった原稿は不鮮明なため難しいです。
 私は、日本語のOCRソフトとしては、購入した複合機に備え付けのものを使っていますが、多くの高性能ソフトが市販されています。
 また英文のOCRソフトとしては、「TextBridge Pro 11」を使っています。
http://www.brothersoft.com/textbridge-pro-101327.html

(2)PDFから読み込む
 英文和訳の場合、PCTルートにしろパリルートにしろ、原文をPDFでもらうことがあります。そのPDFからテキストにすることができます。
 私が使っているソフトは、「PDF Converter 4.0」と「速攻!PDF to Data」です。
−「PDF Converter 4.0」
http://www.nuance.com/pdfconverter/standard/
−「速攻!PDF to Data」
http://e-shop.crosslanguage.co.jp/item_detail.html?item_cd=09547-A-CL)  

(3)Websiteからコピーする
 英文和訳のPCTルートの場合、以下のWebsiteなどから電子データをコピーできます。明細書の公開番号などを入力して検索した後、画面をコピーします。
 欧州特許庁(EPO):(http://ep.espacenet.com/numberSearch?locale=en_EP)(図参照)

 ただしこれらの電子データは、内容が欠落している場合があるので、紙/PDF原稿と見比べてチェックしておく必要があります。

 ペーパーレスのおかげで、納品も電子メールが普通です。ベテラン翻訳者に聞いたところ、昔は、手書きの翻訳原稿を郵便で納品していたそうです。つくづく、21世紀になってから翻訳を始めて良かったと思います(笑)

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2008年6月1日
10.対訳形式のすすめ

 「秀丸エディタ」を用いた翻訳作業の基本は、対訳形式です。

 これは画面上で、左に原文ファイルを開き、右に訳文ファイルを開いて、原文を見ながら訳文を仕上げていく方法です(図参照)。
 対訳形式は、紙原稿をパソコンの横において翻訳する場合と比べて、視線の動きがはるかに小さくなります。そのため翻訳スピードが上がり、誤訳・訳抜けも減ります。また校正も楽です。

 「秀丸」では、2つのファイルを瞬時に横に並べられるボタンがあります。また2つのファイルを同時にスクロールできるボタンもあります。
 「ワード」の場合、2つのファイルを縦に並べるボタンはありますが、横に並べるボタンはありません。また同時スクロールもできません。

 原文ファイルは、原文を電子ファイルで入手して作成します。そして文章ごとにバラバラにして、一文づつ見られるようにします。これらの方法については、別のところでお話しします。また私は、訳文の作成を「上書き翻訳」で行なって、作業の省力化・高精度化を図っています。これについても、別のところでお話しします。

 なお翻訳中は、紙原稿もパソコンの横において、万一に備えるようにしています。これは、電子ファイルの内容が紙原稿とずれた場合などに対処するためです。

 対訳形式は、目の動きが狭まるので体にも楽です。翻訳に限らず、「目移り」すると良いことはあまりないようです。

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2008年5月7日
9.テキスト・エディタのすすめ

 前回から少し変わって、パソコンのお話にしばらくお付き合い下さい。
 皆さんは、翻訳作業をするときのワープロソフトは何ですか?
 おそらく「ワード」でしょう。
 私は、ワードを使うのは納品時だけで、翻訳作業自体はテキストエディタを使っています。

 テキストエディタというのは、ワープロソフトから、付属機能(ページレイアウト、校正など)を省いて、テキストの作成/編集に必要なもの(入力、置換など)だけを備えたツールです。
 テキストエディタはシンプルな構造なので、ファイルのオープン/クローズが速いだけでなく、作業中の動きも速くて軽快です。いきなり「フリーズ」することもありません。

 特許翻訳にはテキストエディタが向いています。それは、特許明細書のフォーマットが固定していてシンプルだからです。明細書は、作表やDTPなどの作業は基本的になく、文章のベタ打ちだけです。ワードでは、このような翻訳には不要な機能が多すぎます。

 テキストエディタはいくつか知られていますが、私は「秀丸エディタ」をお薦めします。これはシェアウェアのソフトで、「秀まるおのホームページ」(http://hide.maruo.co.jp/index.html)からダウンロードすることができます。
 「秀丸エディタ」のメリットは数多くあります。たとえば、
−エディタ機能が豊富(検索・置換が強力、用語の色分け等)
−マクロ命令の機能が豊富で、翻訳作業の自動化が容易
−ユーザの声を反映して絶えずバージョンアップされている

 特許翻訳は、内容は複雑ですが、形式はシンプルです。テキストエディタを使った身軽な翻訳をお薦めします。

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2008年4月10日
8.原文に忠実(1)

 英文和訳の場合、原文が見えるように翻訳することが大事です。
それは顧客からすればチェックが楽ということになります。

(1)ひとつひとつの原語には、それぞれ異なる訳語をあてます。
 同じ意味だと思えても違う訳語をあててコメントし、顧客が後で変更できるようにします。
−"choose" と "select" → "選択"と"選定" など

−"The user is given the choice of selecting a specific operator or the general queue."
 "ユーザに、特定のオペレータを選定するか、一般的な待ち行列を選定するかの選択を与える"

(2)特に前置詞の場合、同じ「〜で」等と訳さないで、原語の違いが出るように訳します。
−「in」 :〜の中で など
−「on」 :〜上で など
−「with」:〜を使って など

−play basketball in a gym
 体育館でバスケをする → 体育館の中でバスケをする
−play basketball on a street
 道路でバスケをする → 道路上でバスケをする
−play basketball with a balloon
 風船でバスケをする → 風船を使ってバスケをする

(3)原語の順番どうりに訳す工夫をします(これは別のところで詳述します)。

−The water has a temperature of 50 to 100 C.
 水は50〜100℃の温度を有する →
 水の温度は50〜100℃である。

 冬も終わり春になりました。季節に合わせて「薄着」な翻訳を始めましょう。

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2008年3月19日
7.検索は「分解」して行なう

 英語の用語が辞書で見つからないとき、Google などでネット検索するのは一般的です。でも日本語ページが全然ヒットしなくて困り果てることがあります。
 一案は、Googleの「画像」(検索ページ左上)を使って、検索語の図や写真を見て訳語を考えることです。でもこの手はいつも使えるわけではありません。

 こういうときは、検索語を語句に分解して行なうのが効果的です。たとえば以下のような手順です。
・語句間に「*」(ワイルドカード)を挿入して検索
・語句間でAND検索
・語句の使われ方を推測して検索

◆ 検索例をお見せします。蒸留についての英語です。
(検索1)・ 検索語 : "pot to pot distillation (蒸留)"
     ・ 日本語 : なし
(検索2)・ 検索語 : "pot to pot * distillation" (ワイルドカード)
     ・ 日本語 : なし
(検索3)・ 検索語 : "pot to pot", "distillation" (AND検索)
     ・ 日本語 : なし
◆ 英語の説明文を探す
  推測した説明文 : "as pot to pot"
(検索4)・ 検索語 : "as pot to pot", "distillation"
     ・ 英 語 : "Simple batch distillation (sometimes
   referred to as pot to pot)..."
◆ 結局、分かったのは、
 "pot to pot distillation" は 「バッチ式蒸留」の別称である。
 これをコメントして、訳語は「ポット・トゥ・ポット蒸留」と提案。

 このように、ドンピシャのヒットがないときは細かく切り刻むと効果ありです。

 最近、芸能人の名前が思い出せなくなりました。"ほら、あの子" で検索して一発で見つかるサービスが欲しいです。

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2008年2月27日
6.コメントが評価を左右する(2)

 今回はコメントの内容と形式についてです。

 私の場合、コメントの内容は以下の3つです。
 −用語の対訳(原語と訳語)
 訳語が辞書にはなく、ネットでもヒット数が少なかったときなどにコメントします。またどう手をつくしても分からなかったら「とりあえず」訳語を当てて、コメントして逃げます。
 また英日翻訳では、似ている原語でも違う訳語を当てます("position"と"location" → "位置"と"箇所" など)。

 −誤記の指摘
 日英では、誤記だとハッキリ分かれば修正して訳して、コメントに書くことができます。
 英日では、誤記のまま訳して修正案をコメントします(誤記のままでは文章にならない等を除いて)。

 −ロジックの間違いの指摘
 原文をそのまま訳して、修正案をコメントするか、
 原文を修正して訳して、修正したことをコメントするか、です。
 修正は、間違いだとハッキリ分かるもの、間違いのままでは他の部分と合わないものだけです。
 原文の意味が不明瞭なときは、「とりあえず」訳して "確認して下さい" とコメントして逃げることができます。

 なおコメントの形式は、表にするのが見やすくて良いと思います。

 以下は私が実際に出したコメントの例です。
原文頁
用語等 コメント
1
1
「by more that 50%」は「by more than 50%」の誤りと思われますので訂正し訳しました。
1
1
「信号の論理和」は「信号の論理積」の誤りと思われますが、原文通り訳しました。

 なおコメントを、翻訳会社等から配布される表に書き入れるのは面倒です。ワード上で最初に項目やコメント等をタブで区切っておいて、「文字列を表にする」(罫線→変換)で表にすれば簡単です。

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2008年1月30日
5.コメントが評価を左右する(1)

 特許事務所等に勤めている翻訳者と違って、フリー翻訳者には翻訳コメントはとても重要です。顧客との大事なコミュニケーションです。
 顧客の信頼感を得るためにも、コメントはしっかり書く必要があります。弁理士の中には、コメントがしっかりしている(内容に突っ込んだコメントである等)と、訳文のチェックを軽くすると言う人もいるほどです。
 翻訳が終わった後にコメントまで書く余力は残っていないなどと言わずに、もうひと踏ん張りすることが、良い翻訳者としての評価を得るコツです。

 コメントには、翻訳のときに生じた不明点などを書きますが、そういうことは顧客に電話で聞けば良いと思われるかも知れません。でも、そう簡単ではありません。
 日英翻訳の場合、原文の明細書は数ヶ月以上前に作成されたものであることが多いため、顧客に原文について聞いても、迅速な対応は望めないことが考えられます。まして電話では、スムーズにいかない場合もあります。
 また英日の場合、作者は外国人なので、顧客に電話で聞いてもハッキリとした対応は望めません。

 「こんなこと書かなくても分かるだろう」とは思わずに、少しでも不明・あやしい点には迷わずコメントをつけた方が無難です。

 私の場合、コメントの内容は、主に以下の3つです。
 (1)用語の対訳
 (2)誤記の指摘
 (3)ロジックの間違いの指摘
 次回は、これらの内容や形式の具体例をお出しします。

 「ノーコメント」と言えるのは、芸能人と政治家ぐらいです。翻訳者はたくさんコメントすることが肝心です。

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2007年12月29日
4.原文にダマされない(2)

 特許明細書の分かりにくい文の例は「いくつもの意味に取れる文」です。

 簡単な例を、一般の文章であげてみます。
 「渡辺刑事は血まみれになって逃げ出した賊を追いかけた」
(「日本語の作文技術」(本田勝一)より)
 この文は、読点「、」の場所によって2つの意味になります。
 「渡辺刑事は、血まみれになって逃げ出した賊を追いかけた」
 「渡辺刑事は血まみれになって、逃げ出した賊を追いかけた」

 明細書でも同じような不明瞭な文が多いです。このような文は、ロジックで読まないとダマされます。
 以下、私がダマされかけた文を簡単にしてお見せします。

(1)「コンピュータによって、プレス機は制御されている。
  プレス機は、その制御に従って搬送された鉄板をプレスする」
 2行目は「制御に従って鉄板が搬送された」ように読めますが、そうではありません。制御されているのは「鉄板をプレスする」ことです。2行目は、次のように理解する必要があります。
「プレス機はその制御に従って、搬送された鉄板をプレスする」

(2)「ガラス板またはガラス板の上に作られた回路の上に作られた絶縁膜の上に電極を作る」
 この文章は読点「、」がまったくありません。言葉を追うだけでは、どこで切ったら良いか分かりません。
 この文は、技術的に考えると以下であることが「推理」されます。
 「ガラス板の上に、またはガラス板の上に作られた回路の上に作られた絶縁膜の上に、電極を作る」

 いかがでしたか?
 今年(2007年)の一文字は「偽」でした。明細書の「偽」にも十分に気をつけて下さい。

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2007年12月8日
3.原文にダマされない(1)

 原文となる特許明細書は、マニュアルなどに比べると、とても分かりずらいものです。原文には必ず不明瞭/不正確な箇所があると思って間違いありません。

 そのため、言葉を追うだけでは原文を正確に理解することはできません。技術的なロジックを追って原文を理解する必要があります。
 実は私も最初から、発明のイメージがはっきり掴めているわけではありません。足許を踏み固めながら前に進むうちに、全体が見えてくるのです。

 ロジックを正確に追うための特効薬はありません。経験/訓練を積むだけです。
 まず、知らない技術であればネット検索などで調べます。でも発明の内容が、検索でそのままヒットすることは、まずありません。後は明細書の中から、自分でロジックを組み立てていくしかありません。
 その際、私は次のことに気をつけています。
(1)まず明細書の全体の流れを整理する、(2)必ず図面と照らし合わせて読む、(3)校正では十分に時間をかけてロジックを確かめる。
 不明瞭な文章に出会ったら、ロジックが合う意味を探します。そういう意味で、特許翻訳は「推理ゲーム」です。

  ところで、映画「薔薇の名前」(主演:ショーン・コネリー)をご覧になった方もいらっしゃるかと思いますが、タイトルの「薔薇」は何を意味するか、私は気になりました。結局、私の推理では「村の女の子」に落ち着きましたが、こんな風に息抜きのときでさえアレコレ考えてしまうのも、職業病でしょう(笑)(後日、読者の方からのメールで、「薔薇の名前」には宗教学的な意味があることが分かりました)。

 次回は、私がこれまでに経験した不明瞭/不正確な明細書の例をお出しします。一緒に悩みましょう。

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2007年11月11日
2.チェックの楽な翻訳文を出す

 私が仕事を頂いている顧客は、都内の特許事務所3ヵ所です。
 高いレートで仕事を継続して受けるために一番大事なことは、顧客の立場から見ると、チェックが楽な翻訳文を出すことだと思います。
 翻訳文のチェックが楽であれば、チェック時間が短くて済みます。したがって、たとえ高いレートでも、顧客はその翻訳者に仕事の依頼をするでしょう。逆に、チェックに時間のかかる訳文を出す翻訳者には、高いレートでの仕事の依頼はまず来ないでしょう。

 チェックの楽な翻訳文とは、次のような訳文ではないかと考えています。
−ロジックが正確である
−コメントが充実している
−原文に忠実である
−用語が適確である
−調査がしっかりされている
−フォーマットが守られている
 この中で最も大事なのは「ロジックが正確である」こと、すなわち「技術内容の理解が正しい」ことです。訳文のロジックが間違っていると、顧客のチェック(修正)にかかる時間がとても長くなるからです。

 もっとも私自身は、仕事で頭を使いすぎるせいか、たまに行く飲み屋ではやりとりに一貫性がなくなるようですが(笑)。

 次回は、ロジックが正確な翻訳をするための「原文理解」について、お話ししたいと思います。なおその他の項目についても、次回以降、お話しする予定です。

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2007年10月20日
1.初めまして

  フリーで特許翻訳をしている杉山範雄と申します。このたび、「あの手・この手の特許翻訳」というタイトルで、ブログを始めさせていただくことになりました。お付き合いのほど、よろしくお願い申し上げます。

 私は、フリーになって今年で6年目です。その前は特許事務所で和文明細書の作成+英日翻訳をしていました。英日翻訳の経験は10年余り、日英は5年ほどになります。
 フリーランスとしてはまだまだ駆け出しですが、安定して仕事を頂いています。最初の頃はヒヤリとしたこともありますが、おおむね1ヶ月先まで仕事が入っています。当初は翻訳会社2社から仕事を受けていましたが、その後、特許事務所に切り替え、今は事務所3ヵ所から仕事を受注しています。

 ここでは、私がフリー翻訳者になって体感したこと、フリー翻訳者を続けるために実践している工夫みたいなことをお伝えしていきたいと思います。
 フリー翻訳者は、翻訳会社や特許事務所に勤めている翻訳者(インハウス翻訳者)とは、だいぶ立場が違います。より高収入が期待できますが、その反面、仕事をもらい続けるための「技」が必要です。
 翻訳の品質とスピードを高めることは当然必要です。そのための特許翻訳の勉強やパソコンによる翻訳支援などに、「技」が必要です。
 また、顧客との「コミュニケーション」や「距離感」も大事です。翻訳文に付けるコメントなどに、「技」が求められます。

 そんなフリー特許翻訳者としての「生き残り術」みたいなことを、書き綴っていきたいと思います。どうぞよろしくお願いいたします。

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<目次>
1.初めまして
2.チェックの楽な翻訳文を出す
3.原文にダマされない(1)
4.原文にダマされない(2)
5.コメントが評価を左右する(1)
6.コメントが評価を左右する(2)
7.検索は「分解」して行なう
8.原文に忠実(1)
9.テキスト・エディタのすすめ
10.対訳形式のすすめ
11.ペーパーレスのすすめ(1)
12.ペーパーレスのすすめ(2)
13.「上書き翻訳」のすすめ(1)
14.原文に忠実(2)
15.「上書き翻訳」のすすめ(2)
16.「上書き翻訳」のすすめ(3)
17.「上書き翻訳」のすすめ(4)
18.「上書き翻訳」のすすめ(5)
19.周辺機器のはなし
20.フリーソフトの紹介(1)
21.フリーソフトの紹介(2)
22.正規表現による検索と置換
23.「上書き翻訳」のすすめ(6)
24.複数の用語集を使う
25.過去の訳文を利用する
26.自作「秀丸」マクロの紹介(1)
27.自作「秀丸」マクロの紹介(2)
28.「マイ用語集」蓄積マクロ(1)
29.「マイ用語集」蓄積マクロ(2)
30.コメント作成マクロ(1)
31.コメント作成マクロ(2)
32.自作「ワード」マクロの紹介
33.「秀丸」の引越し
34.原文を分割して訳す
35.原文の語順に沿って訳す
36.ダミー動詞を使って訳す
37.記憶しないで記録する
38.納品するファイルの実際
39.おすすめ情報
40.もっと「the」を使おう
41.「秀丸」マクロの作り方(1)
42.「秀丸」マクロの作り方(2)
43.「秀丸」マクロの作り方(3)
44.「秀丸」マクロの作り方(4)
45.パソコンを活用するメリット
   (最終回)

(杉山範雄プロフィール)
1959年静岡生まれ。魚座O型。
名古屋大学大学院工学研究科 結晶材料工学専攻卒。工学博士。
国内・外資系メーカーを経て、1996年より特許事務所に勤務。 国内用特許明細書の作成とともに、外国からの特許明細書の翻訳を担当。
2002年からフリーランスの特許翻訳者(英日/日英)に。 専門は物理/半導体/材料/電気/電子/光学/通信。
東京都在住。
2003年 エイバック特許翻訳上級コース修了

趣味はボウリング。「サムレス」投法でAve.200を目指し、日本一ボウリングの上手な特許翻訳者を夢見ている。
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