米国パテントエージェント 兼 特許翻訳家
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日本人の英語表現と、米国出願の実務上の留意点を中心に述べてみます。
 米国審査基準MPEPは こちら
2011年11月 24日
8.閑話休題

「プラスチックバッグありますか。」と聞かれたら、あなたならどんなものを差し出しますか?
プラスチックの書類を入れるケース?透明のパッケージ?
米国人は、ビニール袋を差し出します。

日本人は、プラスチックというと「硬い」イメージではないでしょうか?
今まで、米国人と日本人とプラスチックのとらえかたが違うなんて考えたことありましたか?
それから米国人と日本人と「ビニール」のとらえかたが違うと思ったことありますか?

そこで、日本人が考えるプラスチック製品の材料表示をみると「樹脂」と記されています。ビニール袋の材料表示にも「樹脂」と記されています。この「樹脂」は、特許明細書にもよくでてきます。そして「樹脂」は、多くの場合"resin"と訳されています。日本人のエンジニアは樹脂をresinと考えているようです。

しかし、米国人は一般的にresinを、木からでる樹液、琥珀、人工ポリマーとしてとらえています。私の個人的なresinによって出てくるイメージは、日本で作られた特許明細書に対応するまで、ほぼ"epoxy resin"しかなかったのです。他の米国人のresinのイメージは違うかもしれませんが、例えば、"This cup is made of resin"と言われたら、米国人は大変違和感があると思います。なぜならば、そういったcupはresinのイメージで、まだ接着剤チューブに入っているままのもので作られているか、乾燥した木の樹脂といったそんな脆い奇妙なもので作られているかと思ってしまうからです。

一般的なアメリカン英語の辞書により、"resin"は
1. Any of numerous clear to translucent yellow or brown, solid or semisolid, viscous substances of plant origin, such as copal, rosin, and amber, used principally in lacquers, varnishes, inks, adhesives, synthetic plastics, and pharmaceuticals.
2. Any of numerous physically similar polymerized synthetics or chemically modified natural resins including thermoplastic materials such as polyvinyl, polystyrene, and polyethylene, and thermosetting materials such as polyesters, epoxies, and silicones that are used with fillers, stabilizers, pigments, and other components to form plastics.
という定義になります。ところで、上記1.のresinは不可算名詞としても使う場合がありますが、2.の方は可算名詞としてしか使わないのです。
それから同じ辞書により、"vinyl"は
1. The univalent chemical radical CH2CH, derived from ethylene.
2. Any of various compounds containing the vinyl radical, typically highly reactive, easily polymerized, and used as basic materials for plastics.
3. Any of various typically tough, flexible, shiny plastics, often used for coverings and clothing
とあります。

要するに、アメリカン英語では、resinはplasticの基本材料で、vinylは特別なplasticを作るためのresinかそれで作られた特別なplasticです。つまり、アメリカン英語ではresinはplasticの同義語ではない(resin ≠ plastic)、そのうえ、plasticはvinylに対して上位概念であるのです。そして、英語の単数・複数の感覚をきちんと守りながら、"vinyl is an example of a resin"と考えなければいけません。
そして同じ辞書により、"plastic"は
1. Any of various organic compounds produced by polymerization, capable of being molded, extruded, cast into various shapes and films, or drawn into filaments used as textile fibers.
とあります。
結論としては、"resins are synthetic polymers used to make plastics"ということを念頭に置いたほうがいいと思います。

米国人には、"This cup is made of a resin"や" This cup is made of a synthetic resin polymer"などのような英語も通じますが、必要以上に技術的で堅苦しい表現だと思われるでしょう。一方、技術的な用語としてもplasticは優等生で、上位概念の意味合いもありますので上手く活かせると思います。

よって、よく明細書に出てくる「樹脂」や「合成樹脂」⇔ "plastic" と訳すのがいいと私は思うのですがいかがでしょうか?

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2011年5月 18日
7.(L)時制(英語で重視する) 対 相(日本語で重視する)

・動詞によって表す動作の時(順序)
vs.
・動詞によって表す操作の完成度をどれぐらい差異化できるか 
*例文*
「ハブ 10 の外周壁よりも短く立ち上げられた環状壁部 11」
間違った訳
an annular wall portion 11 _that has been stood_ shorter than the outer circumferential wall of the rotor hub 10
正しい訳
an annular wall portion 11 _standing_ shorter than the outer circumferential wall of the rotor hub 10.

 (M)その他のトラブルになりがちな点
・「等」の対処 :一般的概念の欠如
・「の」の翻訳でしてはいけない事 :「の」の正しい翻訳はいつも"of"と思い込まない。
 - 固有の性質: 「肌の色」 -"the color of the skin"
 - 数量的な性質:「肌の色値」 -"the color value for the skin"
・過剰な翻訳
 -「防縮加工を施した生地」
X i. cloth on which a shrinkage-prevention process has been implemented (?)
X ii. material having been subjected to a shrinkage-prevention process (?)
X iii. fabric that has undergone shrink-proofing (?)
○ --> "preshrunk fabric"

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2011年4月 8日
6.(D) 句読点

(英語での句読点の重要さ)

句読点がないと英語は下記のように見えます。
withapolyethylenefilmof100μmthickness30mmdiameterasasubstratea
thincopperfilm2asillustratedinfig1wasformedto01μmthicknessbyvapor
depositionovertheentirebacksidesurfacethesidesurfacesandanareaofa
pproximately05mmwidthalongtheperipheralmarginoftheuppersurfaceof
thepolyethylenefilm1

しかし、句読点を加えると下記のようになります。
With a polyethylene film of 100 μm thickness, 30 mm diameter as a substrate, a thin copper film 2 as illustrated in Fig. 1 was formed to 0.1
μm thickness by vapor deposition over the entire back-side surface,
the side surfaces, and an area of approximately 0.5 mm width along the peripheral margin of the upper surface of the polyethylene film 1.

 (E) 構文(シンタックス)

(語句レベルでのシンタックスの問題)

1.「阪神大震災」
X : "The Hanshin Great Earthquake"
○ : "The Great Hanshin Earthquake"

どうして?
なぜなら、英語で"The Hanshin Great Earthquake"と言うなら、"Hanshin Small Earthquake"と連想してしまいます。

2.「軸受けの製造方法」
X : "a manufacturing method of a bearing"
○ : "a method of manufacturing a bearing"
○ (streamlined): "a bearing manufacturing method"

(節レベルでのシンタックスの問題)

日本市場における女性の化粧品の英文から
"Improves moisture absorption for your skin" 
(「お肌の水分吸収力を改善します。」でしょう。)
vs.
"Improves your skin's ability to absorb moisture"

(文章レベルでのシンタックスの問題)

「前記スラリーをスプレードライアー等の手法によって、顆粒を作成する。」

弱点があり、分かりにくい
"Granules are prepared by a technique such as spray-drying the slurry."
- (Could something else besides the slurry be treated to produce the granules?)

まだ弱点あるが、分かりにくさは減少
"Granules are prepared by spray-drying the slurry or by a similar technique."

強い
"Granules are prepared from the slurry by spray-drying it, or by means of a similar technique."
(次回に続く)

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2011年2月25日
5.Some Key Differences between Japanese and English, and Their Impact on J→E Translation

T.根本的に異なる言語の英語と日本語
<英語>
・アルファベット
(抽象的で不規則的な文字と読み方の関係)
・構文(シンタックス)依存  
・階層的論理による構造 
・文脈に依存しない
・「時制の順序と一致」を強調する

<日本語>
・漢字とカナ
(具体的、視覚的、そして規則的な文字と読み方の関係)
・助詞依存
・形式的な関係論理による構造
・文脈に依存する
・相(アスペクト)を強調する

U.J-E翻訳する際の考慮すべき言語要点の概略
(A) a 対 the
(B) 可算名詞 対 不可算名詞
(C) 単数 対 複数
(D) 句読点
(E) 構文(シンタックス)
(F) 因果関係
(G) 独立節と従属節
(H) 能動態 対 受動態
(I) 移行詞と連結語としての不定詞の使用
(J) 主語の省略および主語と動詞(数など)の一致
(K) 懸垂前置詞・分詞修飾語
(L) 時制 対 相
*いくつかの例文を次回挙げます*

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2011年1月31日
4.米国出願に対する特許クレーム翻訳
  <Rule No. 2><For>対<That/Which>と
            <修飾する分詞>対<従属節>

米国特許実務家のBible of Claim DraftingであるLandis on Mechanics of Patent Claim Draftingに説明している "inferential claiming" という問題は、「別の要素を述べている節において、クレームの新しい要素を加えるということ」 または 「クレームで先に記述されている要素以外の新しい要素の働き、または作用を述べるということ」です。

そして、クレーム要素を加える際に関係代名詞の使用を避けることは、inferential claimingを避けるのに役立ちます。よって、Rule No. 2に従うことになります。

第3回の例題に戻ってみましょう。Rule No. 1を適用する前の例題の最初に "a shaft that on one end carries a gear train" と書かれています。ここで、節が説明するように書かれているので、 一つの問題は "that on one end carries a gear train" のgear trainがshaftを限定しているかどうかわからないことです。

しかし、その従属節を分詞による修飾句に入れ替えることにより "a shaft . . . on one end carrying a gear train" となり、shaftはgear trainによって限定されていることが明確になります。つまり、 "that on one end carries a gear train" 従属節の場合の、ただ単にshaftについてのコメントをしているようなことがなくなります。

が、もう一つの問題もあります。それは、gear trainはshaftを限定していても、shaftと同じように、実際のクレーム範囲に含まれているのかどうかわからないことです。つまり構成要素としてクレーム範囲に含むべきだとすると、そのままではやはりinferentially claimedしかないのです。そこで、積極的にクレームするために、下記のようにし、先にshaftを述べ、それからgear trainを前にもってきて、従属節を過去分詞による修飾句にすると

  a shaft;
  a gear train carried by said shaft on one end

となり、gear trainはクレームの範囲に含まれることが明確になります。ただし、そこまでの形にすることは、翻訳者の責任として許されている範囲を超えているかもしれませんね。

次に "a pinion . . . that engages with a rack that is disposed on the frame" はどうでしょうか?この構文では、rackが、クレームの範囲に含まれているのかは不明瞭です。しかし、修正のように "said pinion for engaging with a rack disposed on the frame" という形にすると、rackはクレームの範囲に含まれていますか?答えはノーです。形は断定的なものになったもののrackの役割はpinionの機能をfor engagingとはっきり特徴づけることであり、実際にクレームの範囲に は含まれていません。

クレームの範囲に rack を含めるには、

a rack disposed on the frame, said pinion engaging with said rack

のように、rackを前にもってきて、said pinion for engagingのforを削除する。すると、pinionのかわりにrackに焦点をあて、pinionとrackがどのような構造、位置関係になっているかを述べることになります。

Inferential Claiming の問題は、解説よりも実際の例をみていただく方がわかりやすいでしょう。この問題を頭において翻訳に取り組むなかで、「この場合はどうかな」と考えることを実践していくことで理解が深まっていくことでしょう。

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2010年12月28日
3.他の例、下記を日本語のクレーム翻訳の一部とします。

a shaft that on one end carries a gear train;
a pinion that is mounted on the other end of the shaft and that engages with a rack that is disposed on the frame

(ここで、フレームという構成要素が、すでにクレームに記載されたと仮定します。) 従属節 "that on one end carries a gear train" は、断言しているというよりも、説明しているようです。この記載は、クレームの構成要素として、 " on one end of which a gear train is carried" と記載するのと同じぐらいに説話的で不明瞭です。この表現によって、何かクレームしているでしょうか?仮にそうならば、単にどのような種類のシャフトをクレームしているかについて述べているだけでしょうか。あるいはシャフトの機能をクレームしようとしているのでしょうか?言い換えると、この従属節は形容詞(どの種類なのか)ですか? それとも副詞(どんな機能なのか)ですか?例文中の他の3つの従属節―"that is mounted on the other end of the shaft," "that engages with a rack," "that is disposed on the frame"―も同様のことがいえるでしょう。

Rule No. 1を適用して以下の通りに修正することにより、クレーム記載の説話的で不明瞭な言い方を避けることができます。

a shaft, said shaft on one end carrying a gear train;
a pinion mounted on the other end of the shaft, said pinion for engaging with a rack disposed on the frame
- - -
Rule No. 2 については次回へ

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2010年12月 7日
2.<Rule No. 1>クレームは説話的ではなく断言的に
M.P.E.P. 706.03(d), "Rejections Under 35 U.S.C. 112, Second Paragraph"は、§112でクレームを拒絶する際に、審査官が利用できる下記の形式文("¶. . . Rejection Under 35 U.S.C. 112, Pro Se[発明者が代理人を利用せず、自分で出願して手続き処理を全部対応する、つまり素人]")を載せています。 

 -The claim(s) are narrative in form and replete with indefinite and functional or operational language. The structure which goes to make up the device must be clearly and positively specified.
「クレームが、説話的であり、不明確で機能的または運用的な言語が多い。対象発明を構成する構造を明確に確実に規定しなければならない。」
(“太字、下線”は筆者による。)

さて、多くの英語ネイティブスピーカーにとって、第1回連載 (A)のような表現 "a blower that is installed downstream of said chimney and that draws in exhaust gas" は、 断言する、主張するというよりも、物語る、説明するというものです。

さらに、Federal Circuit(米国連邦巡回控訴裁判所)は、かなり以前にSRI International v. Matsushita Electric Corp. (1985) で、「明細書は教示している。クレームは請求している。」と記述しました。つまり、明細書で作成されている説明と同じ方法で、クレームを作成してはいけません。表現 "a blower that is installed downstream of said chimney and that draws in exhaust gas" は、単に明細書の説明から繰り返されているようです。

もう一つの例を下記に示します。日本語 「ガスの流れを制御するバルブ」 がクレーム要素に使用されるとします。この表現に対する最も自然でふさわしい翻訳が、特に特許明細書の説明に使用される上で、"a valve that controls the flow of a gas" となります。しかし、その翻訳が米国実務上のクレームにおいて、どのように読まれるのか考えてみましょう。つまりある意味、この表現は "a valve that just so happens to control the flow of a gas"(「ガスの流れをたまたまちょうど制御するバルブ」)になります。このように読まれると、この表現は世界中のどのようなバルブでも対象にすることができます!

しかし、その日本語を "a valve for controlling gas flow" とすれば、どのような種類のバルブがクレームに規定されているのか明確に定められた語句になります。そして"the flow of a gas" を "gas flow" に変えることが "the flow" と "a gas" の曖昧さをなくすと気付いてください。 "the flow" と言っても、読者には何の流れなのか疑問を抱かせます。上記において流れについて指摘していましたか?或いはそのバルブはガスの膨張などではなく、流れを制御することを伝えたいのでしょうか? "a gas" と言っても読者に対して、ただ流れているだけのガスであれば、どのようなガスでもよいのか、または発明にとって重要で特別なガスを意味するのか疑問を抱かせます。

ちなみに、その日本語を"a gas-flow control valve"にすればより明確で断言的になります。しかし、元の日本語からはあまりにもかけ離れてしまいます。

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2010年11月 22日
1−A 質問&回答
<質問 :米国形式のクレーム形式について>Nさんより(特許事務所に勤務)
並列関係の構成要素AAA、BBB、およびCCCがあって、
BBBはサブ要素aaa、bbb、cccを含む場合、
(例1)
1. XXX, comprising:
    AAA;
     BBB, the BBB including:
     aaa;
     bbb; and
     ccc;
 XXX comprising:
     CCC.
のように、「XXXcomprising:」を繰り返す書き方があるときいたことがあるのですが、 実際にはあまり見かけない気がします。

といって、単に
(例2)       ...
       ccc; and
     CCC.
とするのでは、並列関係が異なってきてしまうとも思われます。 どちらが正しいのでしょうか。
また、例1の場合、メイン要素についての「and」はどこに入れるのでしょうか。
非常に基本的な質問で恐縮です。よろしくご回答お願い申し上げます。

<回答>
基本的なご質問ですが、返事は簡単ではないのです。
米国実務上のクレームの構造における"preamble"(前文)の役割や解釈にかかわる問題と考えます。
例1は、絶対さけたいと思います。なぜなら、いろんな理由が考えられますが、とりわけ"xxx comprising: " を繰り返すと、 "preamble" がどれになるのかややこしくなってしまいます。ほかの理由として、米国のクレームはそれぞれ"What is claimed is" などのような語句に続くように記載しますので、"A "(クレームの対象のもの)tool という構文になります。
したがって、同じクレームの中でもう一度 " xxx comprising: " がくりかえされると、冠詞の"a" か "the" のいずれかをえらばなければなりません。この場 合は、もちろん"the"をつけなければなりません。しかし、"the"をつけると、クレーム全体として英語的におかしくなってしまいます。なぜなら、ひとつは、英 語的に2回目の"xxx comprising:" に "the" をつけると、"comprising:" の前に「更に」が必要な気がします。その場合は、なぜ別の従属のクレームにしていな いかということにもなります。もうひとつは、"the tool" というと、いくつかのtoolのなかで特別に構成されているものを絞り込んでいるという解釈も可能に なるからです。
よって、例2がいいでしょう。
また、並列関係という問題については、構成要素のランク付けというよりも特許 権を規定する各構成要素自体をはっきりさせることが問題になります。その上、 "preamble" と構成要素の区別も大切となります。
米国では、EPOに要求される先行技術を含む構成要素と本願発明の技術の構成要 素をはっきり区別するのとは違い、発明を実施するために必須な構成要素を述べ なければならないという要件しかありません。

ところで、このpreambleの特許権利に対しての役割については、導入部分として だけで構成要素と同じように権利範囲に影響をおよぼさないはずと従来考えられ ていましたが、現在はクレーム全体が特許所有者の権利を規定するというシンプ ルな考えでいこうと動きがあります。が、まだまだ論争的課題です。

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2010年11月 16日
1−@ 質問&回答
<質問>Yさんより
a blower ......, for drawingのforはmeans forと同じように扱われるので使用しない方がよいという意見もありますが、どうおもわれますか?

<回答>
ご質問の内容は、よくあり、多くの方が疑問をもたれるようです。

means + function 記載としてみなされる問題は、翻訳の問題というよりも、構成要素全体の記載の仕方の問題です。

例(B)の場合は構成要素全体を考慮していただきますと、installed downstream of the chimneyの構造的な限定があるので、 for drawing in exhaust gasという記載は、機能的な限定というよりも構造的な限定としてみなされると考えます。
よって、例(B)のほうが例(A)より、断定的にクレームの範囲をはっきり規定します。

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2010年11月 8日
1.米国出願に対する特許クレーム翻訳 <For>対<That/Which>と<修飾する分詞>対<従属節>

私が、大阪の特許法律事務所で勤務し始めた頃、英語特許翻訳のチェックとクレーム補正案の校正をしていたのですが、アメリカの弁護士から、私が英語を十分に配慮(プライドをもって!)しているのにもかかわらず、必ずクレームを変更されることに気付きました。何人かの弁護士達による変更内容のほとんどは、 "that" と "which" の削除、そしてそれを"for"に置き換えることが最も一般的でした。
例題として、私の翻訳仲間から最近届いた下記のクレーム要素の訳文を訂正して、米国の弁護士に提出されたとします。
(A) "a blower that is installed downstream of said chimney and that draws in exhaust gas"
米国の弁護士が、USPTOで出願する翻訳文は間違いなく下記のようになります。
(B) "a blower, installed downstream of the chimney, for drawing in exhaust gas"
私は、米国の弁護士達がいかにも何か必須で重要な仕事をしているかのように、時間を費やしていると思いましたが、私自身が特許出願手続を長年経験した後、一般的に米国の特許実務家が、そのような変更をする理由が分かるようになりました。
簡単に言えば、上記の訳文(B)が米国実務の基本であるのには2つの理由があります。
私がRule No. 1としている第1の理由は、
「クレームは説話的ではなく断言的でなければならない事です。」
私がRule No. 2としている第2の理由は、
「Inferential Claimingを回避しなければならない事です。」
なぜU.S. 実務に基づくこれらの規則ができたのか、また通例に従っているのかに関する私の見解を次回に示します。

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2010年11月 8日
読者への最初のご挨拶
Twenty years ago, when I entered the patent profession as a specification editor, I already was someone who enjoyed the challenge of trying to make technological descriptions clear in my own language. Soon I decided to take on the tougher challenge of becoming someone who could understand how to make English translations of Japanese patent specifications as clear as possible. If this blog can help others do the same, then I will feel my efforts have been that much more rewarded.
                         - James Judge

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<目次>

最初のご挨拶
1.米国出願に対する特許クレーム翻訳 <For>対<That/Which>と<修飾する分詞>対<従属節>
1−@ 質問&回答(Q&A) 1−A (Q&A)クレーム形式 2.−<Rule No. 1>クレームは説話的ではなく断言的に
3.他の例<Rule No. 1その2>
4.<Rule No. 2>
5.Some Key Differences
6.(D)句読点、(E)構文(シンタックス)
7.(L)時制(英語で重視する) 対 相(日本語で重視する)、(M)その他
8.閑話休題

James Judgeプロフィール

1985年米国プリンストン大学卒業 1989-1996年大阪所在の特許事務所に勤務 1996-1998年ニューメキシコ大学、マリーランド大学にて微生物学、遺伝子学及び組織学履修 1998年米国 Patent Agent 登録 ジャッジ パテント アソシエイツ代表 米国パテントエージェントとして、 大阪のオフィスからUSPTOへ直接出願代理をし、中間処理実務と同時に翻訳業務も行う。
2003年よりエイバック特許翻訳上級コース常任講師

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