2008年10月5日(日)
26.変な日本語喋るアイスランド国の整備士さん
9月21日
今回は、初めて、親方以外の請負主から、空輸飛行の仕事を貰いました。既にカナダ国を出て、途中、グリーンランド島辺りで、エンジンオイル温度が、異常値を示し、車輪が格納出来ず、余分な燃料を消費する為、長距離が飛べなく成った与圧客室の高性能セスナ製P 210型機は、アイスランド国レイキャビック空港で、大掛かりな整備中でした。私に、その空輸の仕事を引き継いだのは、トムという、我々の空輸業界では、大ベテランのパイロットの一人です。
トムから、「松。君なら、引き受けてくれるよ、ね。後のことは、頼むよ。」と、いうEメールを、私は受け取っていて、続いて、既に、その時、引退を覚悟していたトムの心情を綴るメールまでも、私は、トムから受け取っていました。「今度ばかりは、もう、自分が駄目か、と思った。松、俺は、この業界から引退するよ。たった一つの命だからね、分かるだろう。」、私は、それまでにも、過去、何回か、トムからは、Eメールを貰っていたし、時には、会ったことも無い私に、直接、電話までくれていたトムに、「今の、君の気持ちは、良く、分かるよ。」と、自分でも良く分からない様な返事を書いた。
そして、請負主のトラビスから、直ぐに、空輸飛行の依頼が来た。「松。君にしか頼めない仕事だから、是非、引き受けて欲しい。ベテラン・パイロットが、お手上げだぜ。直ぐに、アイスランド国に行って欲しい。」と、いうEメールに、私は、「後は、任せて欲しい。ところで、報酬は、幾らくれるのか?」と、簡単なEメールで返事をすると、約束通りに、直ぐに、支度金が、多少、多目に送金されて来た。余ったら、その分、返金するのだろうか、と、私の疑問。
トロント市営空港で、新しいエンジン用に12クオーツのミネラル油、12缶とオイル・フィルターを1個だけを購入して、それを旅行バッグに入れて持参して、月曜日の朝、私は、早速、アイスランド国に到着した。カナダ国から到着したケフラビック国際空港から、首都のある国内線専用のレイキャビック空港まで、高速バスで45分とあるが、市内バス・ターミナルで、一旦、小型バスに乗り換えて、空港ターミナルとは反対側の管制塔の在るホテルの裏側に到着した。
と、小雨の降る中、其処は、未だ、誰も出勤していなかったので、隣の格納庫の方に行くと、そこに並んだ事務所の一つで、背後の格納庫の入り口が、教えて貰えた。その教えて貰った入り口のドアーの横のブザーらしいボタンを押すと、しばらくして、整備士らしい人間が出て来た。私の訪問の目的を伝えると、背後の格納庫の中に入れてくれた。ようやく、オイル缶の入った大きな荷物を肩から降ろして、机の上に置き、辺りを見回した。すぐ横が、格納庫の入り口だったので、格納庫に入ると、私の担当機が、エンジン・カバーが外されたままで、未だ、整備中らしい。「なかなか、立派な飛行機だ。」と、安心をした。
向こうの方で、双発機を、取り回ししていた中から、一人の背の高い整備士が、近づいて来た、「元々、何処から、来たのか。」と聞くから、「日本から来た。」と、答えると、相手は、急に日本語に変わった、「私の妻は、アイスランド国の大使館で働き、私は、一緒に東京で遊んだ、ね。」と、変な日本語を、喋り出したが、私は、この時、如何、対応して良いものやら困って、どうやら、結果は、英語と日本語のチャンポン英語に成った。持参した部品と、オイル缶を渡すと、日本語を喋る整備士は、手際良く、オイル・フィルターを組み込み、エンジン・オイルを給油した。「それでは、エンジンの試運転をしますから、飛行機を外に出しましょうか。」とか、言い出した。
「私は、機体の外から見ているから、貴方が、自分でエンジンの試運転をしなさい。」と、私は、言ったが、変な日本語を喋る整備士は、反対に、「やって下さい。」と、私に頼むから、「それじゃー、良いよ。」と、私は、気安く引き受けて、その飛行機を、移動の支援に集まった他の二人の整備士と協力して、格納庫の外に出し、安全な場所に駐機して、操縦席に座ると、ひと通り機内を見回して、何と、多くの計器類が有ることかと、感心をした。まるで、ジエット機並みである、目の前の計器板の上に並んだ、実に数多い電子機器や計器類の混雑した配置状態を見ると、何が、一体、何処にあるのか、が、良く分からないのである。
それでも、今は、単にエンジンを始動させるだけだから、何のことはない、機外で、安全監視をしている変な日本語の整備士を見ながら、手を回して合図を送り、手元の操作指示票に従って、スィッチ類を、一つずつ動かして行くと、エンジンは、すぐに回転をし始めた。実に、快適な音を発して、エンジンが回り始めた。持参した、ミネラル油のことと照らし合わせると、多分、真新しいエンジンに違いないから、これなら、何とか、スイス国までは行けそうである、と、私は、思った。試運転の間、30分間の内に、3回か、4回ほど、エンジンを始動したり、停止したりしていたら、変な日本語の整備士も、ようやく、O.K.の合図をしてくれた。小雨模様だったが、「それじゃー、明日の出発の為に、戸外の駐機場に移すよ。」と、私は、その整備士に言った。「どう、ゾー。」と、その整備士は返事した。やっぱり、変な日本語だ。
(次週に続く)
新規編集担当として 澤井孝雄
この度、高校時代の友人の寺原君より、ひょんなことから編集委員?をやってくれと頼まれました澤井です。どうなることやら分かりませんが、少しづつやってみますので、宜しくお願いします。