<監修に際し> いま知的財産が脚光を浴びています。本年3月の知的財産基本法の施行とそれに続く小泉首相を本部長とする知的財産戦略本部の発足は、我が国経済の回復を願う多くの方々から、大きな期待をもって受け入れられており、その期待にこたえるべく、同本部は6月20日には「知的財産戦略推進計画(案)」を発表するに至っています。 このような流れの中、知的財産の主要な担い手である弁理士への期待も大きなものがあります。2001年1月の新弁理士法施行により、弁理士の業務範囲が拡大されるとともに、各種の規制が大幅に緩和され、さらには司法改革の流れと相俟って、弁理士への知財関連訴訟代理への道が開けたことは、この一連の流れの先駆をなすものといえます。 しかし、巷においては「弁理士の顔が見えない」という声も聞こえます。知的財産が重視されようとしている中にあって、それを支える弁理士に関してこのような声が聞こえることは極めて残念なことであります。 この主な原因は、これまでの弁理士相互の競争を制限してきた多くの規制にあります。その結果、どの弁理士がどのような分野を得意とし、どのような顧客を有しているか、事務所の規模はどの程度か、と言った情報が明らかにされなかったため、新規に弁理士に依頼しようとするユーザーにとって「誰に依頼してよいか分からない」ばかりでなく、既に特定の特許事務所と提携関係を結んでいるユーザーにとっても、当該事務所の客観的評価ができないこととなります。 国民の知的財産の重要性への認識が深まり、弁理士の役割が強まれば強まるほど、ユーザーの弁理士に関する情報へのニーズも強まっております。 「弁理士情報年鑑」(2003年版)は、特許庁のIPDLを基に、弁理士事務所情報を広く一般社会に伝えようというもので、誠に時宜を得たものと思っております。私は弁理士会在職中からこのような情報の必要性を痛感しておりました。 弁理士の方の中には、このような企画に不快感を持たれる方もあるかとは思いますが、弁理士事務所情報を正しくユーザーに伝えることは、単に一事務所の問題でなく、弁理士業界全体の責務だと思っております。 今回の「弁理士情報年鑑」には、国内の事務所ばかりでなく、中華全国代理人協会の協力を得て、中国の全60渉外事務所中40事務所の情報をも掲載されており、ユーザーにとっても弁理士事務所にとっても、極めて有意義なものと確信しております。
2003年 7月 |